第76話

星は微笑んだ
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2026/02/28 21:00 更新
分裂体(星に願いを)
だめ
小さな声が、霧の中に落ちた。

次の瞬間、敦くんの拳がわずかに逸れる。

鏡花ちゃんの刃も、決定打にはならない。

虎は、倒れない。
あなた
え……?
霧の向こうに立っている“私”。

同じ顔。

同じ姿。

でも、目が違う。

静かで、遠くて。

宝石に、ひびが入っている。

さっきまでなかったのに。

ほんの少しだけ、体が揺れた気がした。

でも、すぐに何事もないみたいに立ち直る。

敦くんと鏡花ちゃんが一瞬だけ視線を向ける。

すぐに虎へ戻す。

鏡花ちゃんは分裂体のほうへ、敦くんは虎の方へ向かう。

追い詰める。

今度こそ。

敦くんが踏み込む。

鏡花ちゃんが刃を振るう。

そのとき。

“私”が、ふっと笑った。

安心したみたいに。

やりきったみたいに。
あなた
……
なんで?

なんか、変。

でも、悲しい感じじゃない。

むしろ、ほっとした顔。

「よかった」って言ってるみたいな。

鏡花ちゃんの動きが、わずかに止まる。

敦くんの表情も固くなる。

でも、すぐに刃が振り下ろされる。

硬い音。

宝石にひびが広がる。

もう一撃。

ぱきり、と砕けた。

“私”の姿が、霧に溶けていく。

最後まで、穏やかだった。

消える直前。

視線が合う。

怒ってない。

苦しそうでもない。

ただ、優しい。

そして、消えた。

同時に。

胸の奥に、何かがすっと落ちてきた。

びっくりするくらい自然に。

冷たくない。

痛くない。

ただ――

暖かかった。

ほっとするみたいな。

懐かしいみたいな。

息が、少し楽になる。
あなた
……?
なんだろう、今の。

でも。

敦くんの拳が虎を砕く。

鏡花ちゃんが着地する。

私は息を吐いた。
あなた
倒せて、よかった……
本心だった。

本当に。

でも。

敦くんと鏡花ちゃんは、どこか静かだった。

さっきの微笑みを、まだ見ているみたいに。

私はただ、

胸に残る暖かさを、不思議に思っていた。
短くてごめんなさい🙇‍♀️

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