霧が、ゆっくり流れていく。
胸の奥に、まだ残っている。
あのとき戻ってきた感覚。
暖かかった。
ちゃんと、自分の中に帰ってきた感じ。
私は深く息を吐く。
霧の向こうで、黒が揺れた。
すっと現れる影。
思わず一歩前に出る。
先に聞いてしまう。
芥川さんは一瞬だけ目を細め、
と答えた。
短いけれど、はっきりと。
ほっとして、今度は振り向く。
敦くんが慌てて言う。
鏡花ちゃんは小さく頷いた。
それから芥川さんが、静かに問う。
私は頷く。
胸に手を当てる。
あの暖かさを思い出す。
そう言った瞬間。
敦くんが即座に反応した。
食い気味。
私は目をぱちぱちさせる。
鏡花ちゃんが、静かに頷いた。
淡々と。
でも、はっきり。
敦くんが続ける。
そこで言葉を切る。
視線が一瞬揺れる。
そんなに強く言われると、逆に困る。
え?
思わず目を瞬く。
本当に、それだけだった。
敦くんが息を詰まらせる。
鏡花ちゃんの声。
静かだけど、迷いがない。
私は二人を見比べる。
そんなに怒られることだったのかな。
そのとき。
低い声。
芥川さん。
視線が合う。
逃げられない感じ。
短い。
でも、重い。
敦くんがすかさず乗る。
三人に見られている。
渋々、頷く。
鏡花ちゃんが一歩前に出る。
さらっと言う。
当たり前みたいに。
敦くんもすぐに言う。
力強く。
でも、そのあと。
少しだけ声が弱くなる。
自分の手を見る。
ぎゅっと握る。
何も起きない。
霧が流れるだけ。
小さな、本音。
その瞬間。
芥川さんの声が落ちる。
敦くんが顔を上げる。
私は二人を見比べる。
誰もすぐには答えない。
霧だけが、静かに揺れていた。
更新頻度落ちてごめんなさい💦















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。