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第77話

無茶は禁止です
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2026/03/02 21:00 更新
霧が、ゆっくり流れていく。

胸の奥に、まだ残っている。

あのとき戻ってきた感覚。

暖かかった。

ちゃんと、自分の中に帰ってきた感じ。

私は深く息を吐く。
あなた
あっ、芥川さん!
霧の向こうで、黒が揺れた。

すっと現れる影。

思わず一歩前に出る。
あなた
怪我してませんか!?大丈夫ですか!?
先に聞いてしまう。

芥川さんは一瞬だけ目を細め、
芥川龍之介
芥川龍之介
問題ありません。
と答えた。
あなた
ほんとに?無理してません?
芥川龍之介
芥川龍之介
……ご心配なく。
短いけれど、はっきりと。

ほっとして、今度は振り向く。
あなた
敦くんも!鏡花ちゃんも大丈夫?
中島敦
中島敦
だ、大丈夫ですよ!
敦くんが慌てて言う。

鏡花ちゃんは小さく頷いた。

それから芥川さんが、静かに問う。
芥川龍之介
芥川龍之介
……異能力は現れましたか。
あなた
あっ、はい!
私は頷く。
あなた
なんか霧の中から出てきて……びっくりしましたけど、ちゃんと戻ってきました
胸に手を当てる。

あの暖かさを思い出す。
あなた
鏡花ちゃんたちが倒してくれたんです!私、ほんと何もしてなくて……
そう言った瞬間。
中島敦
中島敦
何もしてなくなんかないです‼︎
敦くんが即座に反応した。
中島敦
中島敦
貴方がいなかったら、あのタイミングで宝石壊せませんでしたし、あれ結構ギリギリでしたからね!?
あなた
でも当たっただけで
中島敦
中島敦
当たっただけじゃないです!
食い気味。

私は目をぱちぱちさせる。

鏡花ちゃんが、静かに頷いた。
泉鏡花
泉鏡花
……あれがなければ、間に合わなかった。
淡々と。

でも、はっきり。
中島敦
中島敦
それに
敦くんが続ける。
中島敦
中島敦
貴方が動いてくれたから、あいつの注意が逸れたんです。あれがなかったら僕――
そこで言葉を切る。

視線が一瞬揺れる。
中島敦
中島敦
……とにかく!何もしてないは違いますから!
あなた
そ、そう?
そんなに強く言われると、逆に困る。
中島敦
中島敦
……けど、貴方はもっと自分を大切にしてください!
え?

思わず目を瞬く。
中島敦
中島敦
なんであそこで動いたんですか!?危ないじゃないですか!
あなた
え、でも敦くんが危なそうだったし……
本当に、それだけだった。
中島敦
中島敦
結果的には助かったけど……っ
敦くんが息を詰まらせる。
泉鏡花
泉鏡花
貴方が危なくなるのは嫌だ。
鏡花ちゃんの声。

静かだけど、迷いがない。

私は二人を見比べる。

そんなに怒られることだったのかな。

そのとき。
芥川龍之介
芥川龍之介
……また無茶をしたのですか。
低い声。

芥川さん。
あなた
えっと、だから無茶ってほどでも……
視線が合う。

逃げられない感じ。
芥川龍之介
芥川龍之介
……困ります。
短い。

でも、重い。
中島敦
中島敦
そうですよ!もう無茶禁止です!!
敦くんがすかさず乗る。
あなた
えぇ……
三人に見られている。
あなた
わかりました……
渋々、頷く。

鏡花ちゃんが一歩前に出る。
泉鏡花
泉鏡花
私が守るから。
さらっと言う。

当たり前みたいに。

敦くんもすぐに言う。
中島敦
中島敦
僕も守りますから!
力強く。

でも、そのあと。

少しだけ声が弱くなる。
中島敦
中島敦
……ただ、まだ異能力が戻ってきてなくて
自分の手を見る。

ぎゅっと握る。

何も起きない。

霧が流れるだけ。
中島敦
中島敦
なんで僕だけ……
小さな、本音。

その瞬間。

芥川さんの声が落ちる。
芥川龍之介
芥川龍之介
……まだわからぬか
中島敦
中島敦
なんだよ
敦くんが顔を上げる。

私は二人を見比べる。
あなた
え、どういうことですか?
誰もすぐには答えない。

霧だけが、静かに揺れていた。
更新頻度落ちてごめんなさい💦

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