そこから私は、先輩に与えられたソロのダンスを必死に練習をした。
と、いってもそんなに長いものではなくただ10秒にも満たない部分を
少し躍らせてもらうだけなんだけど。
でも、今回の舞台は3年生の先輩にとっては最後の舞台。
そんな舞台の中の涼先輩の作品で、私が泥を塗ることは許されない。
今日も部活が始まる前に誰よりも早く来て練習場に来て一人で踊っていると、
スポーツドリンクを持った梨咲が練習場に入ってきた。
梨咲はニカッと笑うと、私に向かってスポーツドリンクを投げてきた。
梨咲ほど運動神経の良くない私は、
バランスを崩しかけながら慌ててスポーツドリンクをキャッチした。
手の中に納まったペットボトルはついさっき買ったかのようにとても冷たくて、
動きっぱなしで疲れ果てていた私を笑顔にさせるものだった。
梨咲は『少し休め』とでも言いたげに、
床をちょいちょいと指差した。
私は、一瞬迷ったが梨咲の言う通り、休むことにした。
ひんやりとしたスポーツドリンクの蓋に手をかけたと同時に
梨咲が呆れたように私にそう投げかける。
私は梨咲に対して『なんのこと?』と呟いてから、
スポーツドリンクに口を付けた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!