首領室の扉の前に立ち、深呼吸をひとつする。
急な呼び出しに加え、先程の出来事の所為で
何か悪いことが起こるのではないか
という考えが働いてしまう。
コンコン……
そうか告げて扉を開くと、
長机の奥の椅子に座られている首領と
その横でお絵描きをしているエリス嬢の姿が見えた。
本当は予定が無くなってしまったことの虚しさを誤魔化すためか、私は無意識にそんなことを言っていた。
首領はそう言いかけて言葉を止める。
私がその訳に気になって首を傾けていると、
首領はそれを察したのか再び口を開く。
“私は疲れている”
そんなこと、考えもしなかった。
確かに、最近はいろんなことがあったし
多くのものを失った気がする。
だけれど、それは過去のことにしかすぎない。
ちゃんと、前に進まなきゃいけない。
私はそうやって自分に言い聞かせていた。
でないと、私は前に進めなくなってしまうと思った。
私が何度も首領にそうお願いすると、
首領は大きな溜め息をついて私の方を見た。
首領によると、今回回収する秘密書類はポートマフィアに潜入する諜報員に関する資料らしい。
それがあれば、裏切り者が誰なのか一目で判る。
私の生きる道は此処しかない。
なら、確実に成果を出していかなきゃいけない。
弱音なんて、吐いてられない。
任務を完遂し、組織のために尽力する。
それが私の役目。
私はいつの間にか、自分の躰にも
心にも嘘をついて任務へと自分を沈めていった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。