【あなたside】
私は黙り込む.
そんなこと、言えるわけないじゃないか.
ゲンに、メンタリストに、
何が分かるって言うんだ.
やめろ、やめてくれ.
君に話せる内容ですらない.
それ以前に、君以外にすらも話せない.
そんなほどの悩みを聞いて、
何になるって言うんだ.
私はただ、俯きながら、両手の拳を
力強く握る事しかできなかった.
事の状況を察したのか、メンタリストは
悲しい表情をしながらどこかへ消えていった.
その時、何故メンタリストがどこかへ行った
理由が分かった気がした.
私の拳の上で震えている水滴.
私の頬の上を伝う流れの速い水.
それは、明らかに” 涙 “だった.
自分の頬に伝う涙を指に取り、
その雫に映る自分が見えた.
私は、その姿を見て驚いた.
先程メンタリストに言われたように、
痩せ細った体、動かない表情筋を
動かして作る苦笑、目元の濃い隈.
私は、止まらない涙を少しだけ抑えながら
くすみがかった青空を見上げて、
声と捉えていいのか分からない声を出した.
その時だけは、もう何も考えたくなかった.
ただただ、意味もなく、その時だけは
青空を見上げていたかった.
窓から暖かな光が通り、カーテンが揺れる.
その窓はとある部屋に存在しているものだった.
本棚、ベット、机.暖かな光がそれらの
家具を照らしている.
イスには、小学生程の少女が座っていた.
机の上には、紙とペン、そして“ 写真 “.
写真には、“ 茶髪と金髪の幼い男の子 “と、
“ 執事のような “服装をした方と、
“ 顔がぐちゃぐちゃに塗り潰された “
小学生程の少女が、そこには存在していた.
少女は、呟きにも満たない“ ナニカ “を、
俯きがちに、かろうじて言葉にした.
外から爽やかな風を求めて、窓を開ける.
今日は天気が良い日だった.
少女の髪を、風がふわふわと動かす.
そう言った言葉は風に乗って、どこかへ
消えて行った.
少女の瞳の奥には、暗く胸が締め付け
られるような出来事が、色になって
具現化し、ひっそりと隠れていた.











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。