見ると、学ラン姿の男子高校生が、あのおじさんの手を掴みあげていた。
…………えっ。
冷静、無表情でおじさんを見つめるその男子は、ものすごいイケメンさんだった。
サラサラな黒髪、中性的なキレイな顔立ち。
伏し目がちの切れ長の瞳が、どこか気だるそうな印象を抱かせる。
うひゃー、かっこいい!
イケメンがやると、ますますかっこいい。
てゆーか、先を越されちゃったな。
でも、より早く痴漢から女性を救出できてよかった。
あの男子、なかなかわかってる。
こういう時、ハッキリ『痴漢してただろ』って言ったら、被害にあった女性も恥ずかしい思いするんだよね。
思わず拍手を送りたくなった。
するとそのとき、何が起こっていたのかを察した周りの人の冷たい目が、一気に痴漢おじさんに向かったのを感じた。
その視線に耐えかねたのか、おじさんは顔を真っ赤にして、掴まれた手を勢いよく振り払った。
いやいや、アンタが謝れ!
すぐそこにいる女性にー!!
そう叫びたくなったけど、グッと堪える。
むやみに場に乱入するのはダメだ。
なんにも考えずに口を挟んでも、上手くいかないことくらいは、今までの経験から分かってるもんね。
美羽とすずもいつの間にかスマホから顔を上げて、何事かと見ていた。
けど、おじさんはさらにヒートアップして、男子の胸ぐらをつかみにかかった。
ちょっ……なにしてんの!?
イケメンさんの顔が歪んだのを見た瞬間、私の中で何かが切れた。
周りの人は困惑した表情で、成り行きを見ている。
……でも、私は。
見ているだけなのは、嫌。
すずが私を見て、何かに気づいたように声を出した。
その通り!!
私は一歩をふみだすと、そのままずんずんと人の間を縫って歩いていく。
やがて現場にたどり着くと、いまだにイケメンさんの胸ぐらを掴んで、何かを言っているおじさんの後ろに立った。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。