第13話

13話 知らない一面
温かい眼差しで、
こちらを見る響先輩。
あなた

(やっぱり、響先輩のそばにいると
ほっとするな)

あなた

響先輩は、なんでそんなに
面倒見がいいんですか?

吹賀谷 響
吹賀谷 響
癖になってるからだな。
うちは5人兄弟で、
俺が長男なんだ
あなた

ああ、だからなんですね。
料理もそれで?

吹賀谷 響
吹賀谷 響
ああ、母親だけでは
家事が回りきらない。
だから俺が料理担当なんだ
あなた

みんながギスギスしても、
ちゃんと全員分のオムライスを作って、
いつでも食べられるように冷蔵庫に
入れておいてくれるところとか……

吹賀谷 響
吹賀谷 響
ん?
あなた

先輩の懐の広さに、
みんなも私も支えられてます

吹賀谷 響
吹賀谷 響
あなた……。
そんなふうに俺を労ってくれるのは、
お前くらいだ
あなた

みんな言わないだけで、
私と同じ気持ちですよ

吹賀谷 響
吹賀谷 響
ああ、ありがとうな
あなた

お礼を言うのは、私のほうです。
あの、話は変わるんですが……

吹賀谷 響
吹賀谷 響
なんだ?
あなた

響先輩は文化祭の曲、
どんなのがいいと思ってますか?

吹賀谷 響
吹賀谷 響
俺か? そうだな……。
俺は烈歌と弦の目指してる曲を
再現したい
あなた

(響先輩自身は、
どういう曲がいいとか、ないのかな)

吹賀谷 響
吹賀谷 響
俺はあいつらが連れてってくれる
音楽の世界が好きなんだ。
だから、どこまでもついていく
あなた

なんとなくわかります、その気持ち。
私も、烈歌くんに引っ張られて、
音楽の世界に本格的に足を踏み入れ
ましたから

あなた

(新しい世界を教えてくれる人たち。
その人たちについていきたい。
それが響先輩の音楽なんだ──)

***

響先輩との食事を終えて、
部屋に戻ろうと思っていたら、
目の前から弾くんが走ってきた。
真宙 弾
真宙 弾
あ、あなた先輩ー!
これから、一緒に買い物行こうぜ
あなた

か、買い物?

あなた

(どうしたんだろう、いきなり。
でも、やることもないし……)

あなた

うん、いいよ

***

徒歩で10分ほどの距離にある
ショッピングモールにやってきた。
真宙 弾
真宙 弾
なあ、これ!
あなた先輩に絶対に似合う!
なぜか一緒に服を見ていると、
弾くんが白いワンピースを持ってきた。
あなた

小花の柄が可愛いね。
でも、私には似合わない気が……

あなた

(地味な私には、このワンピースは
可憐すぎるような……)

真宙 弾
真宙 弾
いいからいいから、
騙されたと思って試着してきてみ!
弾くんに試着室に押し込まれた。

着替えて弾くんの前に出ると、
その顔がぱっと輝く。
真宙 弾
真宙 弾
やっぱ、可愛い!
すっごく似合ってる
あなた

あ、ありがとう。
いつも無地の服を選ぶことが多いから、
新鮮だな

褒められた私は、
照れくささをごまかすように
何度も髪を触ってしまう。
真宙 弾
真宙 弾
じゃ、次は甘いものでも食べよ。
そのままついてきて
あなた

え? 服返さないと!

真宙 弾
真宙 弾
それ、プレゼント
あなた

もしかして……
弾くん、支払ってきちゃったの!?

あなた

(いつの間に!?)

真宙 弾
真宙 弾
俺がそうしたかったから。
あ、お金のこと気にしてる?
それならへーき
あなた

全然、平気じゃないよ!
服って高いし!

真宙 弾
真宙 弾
俺さ、実家がカフェやってんだ。
部活から帰ってきたら店手伝ってるし、
バイト代も出るから
それだけ言って、私の手を引く弾くん。

お店の人に服のタグを切ってもらって、
次にやってきたのはカフェだ。

注文を終えて一息つくと、
私は疑問をぶつける。
あなた

あの、なんで私に
ここまでしてくれるの?

真宙 弾
真宙 弾
うーん、今日はすごく
空気悪くなっちゃったじゃん?
あなた

う、うん

真宙 弾
真宙 弾
それであなた先輩が、
やっぱ軽音部に入らなきゃ
よかったーとか、思ったら
悲しいなって
あなた

だから、私を喜ばせようと?

真宙 弾
真宙 弾
俺、何事もみんなが楽しいのが
いちばんだと思ってんだ
弾くんの視線が、
クリームソーダに落ちる。
真宙 弾
真宙 弾
だから誰かを喜ばせたいって、
そんな気持ちで音楽やってる
あなた

だから、弾くんのドラムは
いつも楽しそうなんだね。
なんかこう、弾んで聞こえるの

真宙 弾
真宙 弾
はは、俺のドラムって、
そんなふうに聞こえんだ