私、小森あなた、絶賛困り中です。
なんならちょっとイラついてます。
というのも、明日は2月14日。
そう、バレンタインである。
バレンタインといえば、恋人を思い浮かべると思うけど
知っての通り私は元貴くんと恋人…。
こ、恋人………。
まぁ恥ずかしがってる時間もないんだけど。
こういうのをこの前メンバーにも言ってみたんだけど
そしたら2人とも「いやお前が人外」と言われてしまった。
本当に何してやろうか。
無難にチョコクッキーを複数枚作ってみた。
メンバーにマネージャー、それから若井さんと藤澤さん。
そして本命の元貴くん。
ハート型とか星型とか、いろいろな形のものを作ってみてはみたものの
少しもろかったりするし…大丈夫かな…。
そのまま大事に保管しておいた。
翌日。
作るより本当は歌ってたかったよ。
何気に若井さんと藤澤さんに渡すのも緊張するけどね!!!!ううん!!!
そして夜。
ミセスが使用しているスタジオまで向かう。
PMGAの方に案内されて、ミセスがいる部屋まで行く。
あ、ならちょうどいいかも。
と、2人に向けて小さな袋を渡す。
わ、渡せ、た……。
これでも私はまだ、ミセスファンだ。
ミセスとして活動している3人へはファンの目線で見てるし
プライベートは元貴くんは彼氏、2人は彼氏の親友として見てる。
でもやはり今回は、少しオタクが出てしまった。
いけないいけない。
そう言って2人はササッと隠してくれた。
本当にべりーかいんど。
すると、後ろの方で、ガチャとドアが開く音が鳴る。
元貴くんがいる!って思った瞬間思いっきり抱きついてきた。
う、嬉しいけど恥ずかしいし…苦しい……。
そうやって離れた元貴くんはとんでもなくニヤついている。
あ、これ反省してない時の顔だ。
そうやって4人で笑い合う。
…でも私は緊張が抜けきれていない。
じゃ、と元貴くん。
そう言って深く礼をした。
スタジオを出るとすぐ、元貴くんが私に話しかけてきた。
たぶん、チョコのことだな。
期待してくれてたのかな。
そこまでいい出来じゃないのに…。
私は元貴くんにチョコクッキーを__
渡さなかった。
元貴くんは手を出してくれてるけど
私はそこに袋を置かなかった。
そう言って私は袋からクッキーを取り出す。
外は少し暗いが、元貴くんの顔が赤くなってるのがわかる。
声色でも判断が可能なくらいに
元貴くんは今焦っている。
か、かわいい。
あーんっていうんだ。律儀。
そんな可愛い元貴くんの口にクッキーを近づけると
はむっと咥えて食べてくれた。
そのままサクサクと音を鳴らした後
美味しい!美味しい!と食べてくれる元貴くん。
さすがに全てあーんは大変なので、2個目以降は袋をそのまま渡した。
そうすれば元貴くんの手は止まらなくって
一瞬で無くなってしまった。
ドヤ顔で言っていると、元貴くんが目を細めて私を見つめてくる。
唇と唇が重なる。
キスと判断するまでに、そこまで時間はかからなかった。
それに今回は
いつもとなんか違う。
いつもは触れるだけのキスなのに
今回は何回やっても止まってくれないし
くちゅ、くちゅ、と音が鳴る。
舌を、入れられている…?
……そ、そろそろ息が限界。
そう思って元貴くんの胸を数回叩く。
初めてだった。
これが、ディープキス…?
元貴くんが顔を私の顔の横側に近づけてくる。
そして低いその声で耳元に囁いてきた。
もっと、いいこと……。
いいこ、と…。
理解が追いついてしまった。
そ、それって…もしかして……。
チラッと元貴くんを見てみると
完全に狙っている顔だった。
そうやって私の頬をスリスリと撫でてくる。
…一体、どうされちゃうの、私。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。