夕焼けに染まる海辺で深い口づけを交わす。
二人は何処まで愛し合って結ばれたのだった
これが私が大好きな小説の最後の文章。学園モノの恋愛小説。
いろいろなトラブルに巻き込まれても好きを伝える主人公に惹かれた。
純粋な恋愛に憧れているという訳ではないけれど、してみたいと思ってしまう
そんな私にも彼氏は居る。同級生の狗巻棘
彼は呪言師で発した言葉が呪いとなって相手に降りかかるという強くも少し、いや結構面倒くさいものだ
彼は私に『好き』のたった二文字が言えない。呪いとなって私に降りかかるから。
はぁ。なんて短いため息をついてぼーっと空を眺める。
なんて呟くと頬が急激にヒヤッとした。
女子らしからぬ声を出してしまった
なんて悪戯っぽく笑う私の頬に冷たい麦茶を当てた張本人。
キャッキャと逃げる棘に息をぜーはーさせながら追いかける私。なんと夕方近くまで追いかけっこをしてしまっていた。
疲れ果ててその場にうずくまると心配して隣にしゃがみ込む棘。ほんとそーゆーとこ大好き。
ぬるくなった麦茶を差し出してくる。
そういえばあの小説でも今の状況に似たシーンがあったっけ
確か主人公が想い人に初めて気持ちを打ち明けた。いいなぁ、私も一度でいいから棘の口から聞きたい。
でもわかってる。それは一生叶わない。棘は私を思って言葉に出さないのだから
それに行動で示してもらってる。そうだよ、棘は私を思って、
でも、ほんのちょっとだけ。これからも言われないなんて思ったら視界が途端にぼやけちゃう。こんなことで泣いちゃダメなのに。
彼の制服の袖を引っ張って顔を見合わせる。
こくんと頷く。違うよ
言ってしまった。棘は私を思って言わないでくれたのに。嫌われた
あなたの事を思って言ってたのにって。
走り去ろうと背を向けた時だった。
途端に私の体が止まる。
彼は私の目の前に立って言い放った。
ああ、
私を、
呪ってくれて、ありがとう。
放課後、彼と初めて交わした『好き』の言葉は、
小説よりも甘酸っぱくて純粋だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。