第12話

9.決戦
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2024/06/30 10:00
一方、訓練施設では、リヒト、バーボン、ナーガが闇鐘に苦戦を強いられていた。リヒトはナーガを闇鐘から守るようにナーガの前に手を広げて立った。
リヒト
副官は安全なところに!
闇鐘
無駄だ!
闇鐘は攻撃を仕掛けた。とっさにリヒトはその攻撃をかわし、ナーガを連れて部屋の隅まで行った。そこに闇鐘がやってきてナーガに攻撃をしようとするが、リヒトが前に立ち、揉み合いになった。闇鐘がリヒトの腹にパンチをお見舞いする。
リヒト
ぐあっ!
攻撃を食らったリヒトは、その場に倒れこむ。リヒトは立ち上がろうとするが、すぐに闇鐘からパンチを食らった。
バーボン
リヒト!
闇鐘はバーボンの方へと向かい、取り出した拳銃でその場に倒れているバーボンを撃ち殺そうとした。
バーボン
っ…!
バーボンが死を覚悟して目をつむった、その時!

ガアンッ!
闇鐘
何かが拳銃にあたり、闇鐘の手から拳銃が落ちた。リヒト、バーボン、ナーガ、闇鐘は、驚いて扉の方を見た。そこには、天鬼から渡されたであろう光線銃を手に持った、ジュンとホストの姿があった。
闇鐘
…わざわざ死にに来るとは。
ジュン
違う!
闇鐘の問いに、ジュンは否定した。ホストが質問する。
ホスト
闇鐘、お前の目的は何だ?
闇鐘
…この地球上にある、すべての少年刑務所を、消滅させるためだ。
闇鐘が問いに答えた後、向こうの扉の方から、何者かが現れた。それは、ベルバイルだった。2人はあわてて銃を構える。ベルバイルはうめき声を上げ続けた。すると、体が光った。光がやむと、ベルバイルの顔が変わっていた。
その光景に、一同は目を見開いた。
ベルバイル
…戦エバ苦シミガ長クナル。
ソレガオロカナ選択。
ジュン
怪物が喋ってる⁉
突然のベルバイルの言葉に、ジュンが声を上げる。
闇鐘
…威勢が戻ったか。ベルバイル。
ナーガ
…どういうこと?
ナーガが闇鐘に向かって質問した。
闇鐘
理性周期があるんだ。
ベルバイルが作られた情報を聞いた時、
脱獄犯である俺は、「これだ」と感心した。
そして、正体を隠しながらメテオダークネスに入社し、
こいつの実態について研究を重ねた。
ジュン
なるほど…つまり、ベルバイルを利用し、
脱獄犯であるお前は、すべての少年刑務所を消滅させようと…
ジュンが少しイラついた声で訊いた。
ベルバイル
アリガトウ、闇鐘…オ前ハトテモ優秀ナ人物ダ。
ベルバイルが闇鐘をほめた。
闇鐘
…俺はただ、社長の命令に従っただけだ。
お前を強化させ、人間をまとめて殺害させた。
世界を変えるために…!
とりあえず、この邪魔な施設の本部長と副官を殺す…。
闇鐘は、ナーガのことだけではなく、天鬼も殺害しようとたくらんでいたのだ。
ジュン
何てことを…!
ホスト
お前たちの好きにはさせない…!
ジュンとホストの言葉に、闇鐘は目を輝かせる。
闇鐘
ほう…戦闘力が上がっている…!
ベルバイル
コイツラハ、俺様ニオ任セヲ…!
そう言った後、ベルバイルは2人に向かって突進した。ジュンとホストは、ベルバイルを外に突き出した後、自分たちも外へ飛び出した。部屋に残った闇鐘は、ナーガを睨みつけた。
闇鐘
もう助けは来ない。諦めろ。
言った後、闇鐘はナーガに向かって歩いて行こうとした。しかし、起き上がっていたリヒトに止められる。
リヒト
ふざけるな…!
闇鐘はリヒトの体を抑えつける。
リヒト
オレだって受刑者だ!
闇鐘
ほう、いいだろう。
闇鐘が言うと、リヒトを投げ飛ばした。
リヒト
がはっ!
壁に体を打ち付けられたリヒトは、咄嗟に扉を開き、別の部屋へと飛び出した。
闇鐘
お前から先に殺す!
バーボン
リヒト‼
その場に倒れこんでいるバーボンが声をかける。
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一方、ジュンとホストは、ベルバイルと死闘を繰り返していた。唯一の武器である光線銃を使い、同時攻撃で戦っていく。
ホスト
こいつ、本能だけの戦いじゃない!
理性が上乗せされている!
ジュン
そんなの最強じゃん!
とてもかなわない…!
ベルバイル
オロカナ虫ドモノ悪意、ドンナ奴デアロウトモ地獄へ落トス…!
ソレガ当然ノハカナイダ!
ベルバイルはそう言うと、再び2人に襲い掛かった。
その攻撃により、2人は地面に倒れこむ。
ジュン
っ…!
ホスト
くっ…!
起き上がった2人は、光線銃を連射しながら、物陰に隠れた。
ジュン
はあっ…もう無理…!
ホスト
現実もそんなに甘くないな…!
ベルバイル
隠レテモ無駄ダ!
ベルバイルがこちらへと向かおうとしている。
ジュン
俺たち…ここで死ぬのかな…
ホスト
え…?
追い詰められて弱気になったジュンの声に、ホストが反応する。
ジュン
嘘でもいいから、ほかのみんなとまだいたかったな…。
嘘でもいいから、飲食店、出したかったな…。
ホスト
嘘でもいいから…
ジュンの一言に、ホストは何かをひらめいたように目を見開いた。
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一方、闇鐘に追いつかれたリヒトは、闇鐘に首を絞められていた。
リヒト
ぐっ…
闇鐘
可哀想に。
こうやって死罪になって死んだほうがましだな。
闇鐘はそういうと、リヒトを投げ飛ばした。闇鐘が、リヒトを痛めつけようとしたその時、
バーボン
やめろ!
声が飛んできた。振り向くと、バーボンがその場に立っていた。
バーボン
リヒトを傷つけるやつは、絶対に許さない…!
バーボンがそう叫ぶと、バーボンの何かが覚醒した。その様子を見た闇鐘が、目を輝かせる。
闇鐘
なんて力だ…!戦闘力が上がっている…
闇鐘が自分を見ていないと気付いたリヒトは、小さな声で呪文を唱えた。
リヒト
ヨーカイ・チェンジ、猫娘…
と、猫娘の姿になり、闇鐘から距離をとるように走った。そして、覚醒したバーボンは、闇鐘に襲い掛かった。
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別の部屋では、ジュンが物陰から出てきて、ベルバイルの前に立っていた。
ジュン
ベルバイル…覚悟しろ!
ベルバイル
ホウ…ヤレルモノナラ、ヤッテミロ…!
ジュン
…俺たちの力をなめるな!
と叫ぶと、ジュンはベルバイルに向かって一直線に走り出した。だが、ベルバイルが彼の動きを止め、ジュンの腹を手に装備している剣で突き刺した。刺された衝撃で、ジュンはその場に倒れこんだ。
ホスト
そんな…ジュンッ…?ジューンッ‼
物陰から出てきたホストが、大声で叫んだ。
ホスト
お前の死を、無駄にはしないっ…!
大声で叫んだ後、ホストは光線銃を連射しながらベルバイルに向かっていった。が、攻撃をかわされ、ホストは背後から首を絞められたあと、背中を二度刺された。そして手が離されると、ホストはその場に倒れこんだ。
ジュン
ホスト…
口から血を流したジュンは、最後の力を振り絞り、ホストを見てつぶやいた。
ホスト
ごめん…ジュン…
口から血を流したホストが言葉を残すと、2人はその場でガクリと息絶えた。
ベルバイル
フフフッ…ハハハハハッ…!
イイ死ニ様ダナ…。受刑者モザマァナイナ!
ベルバイルが叫ぶと、その場で息絶えているジュンとホストの身体を蹴った―。

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