前の話
一覧へ
次の話

第2話

初めて声をかけた人
9
2019/02/05 22:07
――――――昼休み
「で?どうしたのその子?」
「手を振り払って置いてきた。」
「はぁー!?」
「だって、いきなりで訳が分からなかったし。」
私は今朝起きた出来事を六花リッカに話した。
――――今朝
普段と同じように電車に乗った。そして空いている席へ座った。私がいつも乗る時間帯の電車は、丁度私の乗る駅で多くの人が下車する。そのため、席が空いているのだ。私は横一列に空いた席の端へ腰を下ろした。そして曲を聞こうとスマホを出そうとしたときに、目の前、丁度向かい側の席に初めて見る男の子がいた。凄く綺麗な男の子だった。
(寝てる…)
あの制服は多分成浜高校ナリハマコウコウだ。私の通う江花高校コウカコウコウから少し離れたところにある公立高校だ。私の降りる駅の2つ前の駅で降りる。部活で何度か伺った高校だ。
(今日雨も降ってないのに、珍しい。)
そう思っただけだった。
スマホに占いの通知がなった。そこには『12位』と記されていた。そしてラッキーパーソン『落とし物をした人』。私はさっと見て、通知を消した。
もうすぐ着くところで私は曲を止め、スマホをバックへしまった。前を見ると、まだ綺麗な男の子は寝ている。
(次だけど大丈夫なのかな…)
さすがに心配になる。しかし、さすがに起こしにはいけない。ただ願うことしか出来なかった。
『成浜ー成浜ー 降りるかたは忘れ物をなさらぬようお気をつけください』
その音に男の子は目を覚ました。
「やばっ。」
彼は走って出ていった。空いた座席にスマホが残されていた。
「えっ、ちょっと…!」
焦る男の子の耳には私の声なんか届かない。
『ドアが閉まります ご注意下さい』
♪~♪~
お決まりのチャイムとともにドアが閉まる。
私はホームに立っていた。
「もうなんで気づかないの!?」
私は行き先もわからないまま近くの階段を昇り、構内を早歩きで歩くその手をつかんだ。
「えっ!誰!?」
「はぁ…はぁ…わ…忘れ物…。」
私はスマホを差し出した。
「えっ、あ、本当だ!あ、ありがとう!」
「じゃあ…。」
私は息を整えてホームへと戻ろうと歩きだした。
(意外に声高いんだな…。ていうか電車…あるかな…)
その時、手を捕まれた。振りかえるとその男の子だった。
「あのさ!」
「え。」
「俺と付き合ってもらえませんか?」
・・・・・・・?
付き合う?
「へ!?」
「だから俺と――――」
私は手を振り払った。男の子はびっくりしてる。『無理です』そう言おうとしたが、上手く声が出なかった。鼓動の音が頭に響いてうるさい。私はその場から逃げるように、階段を降りた。
「いやー奈都ナヅにも遂に春が来たのに…。もー!その春を掴まなきゃ駄目じゃない!」
「いやいや、『はじめまして』で『付き合ってください』はおかしいでしょ。」
「そうだけどー!」
確かに綺麗な男の子で、少しひかれるところもあったけど、あの告白はもう驚き以外のなんでもない。急すぎて整理がつかない。
「まぁその子今日偶然乗ってきただけだと思うから、もう会わないよ。」
「運命だったら、引き寄せられるかもよー」
ニヤニヤと笑う六花リッカに構わず、
「ごちそうさま!」
と私はお手洗いへ行くため立ち上がった。

「運命とかそんなもの…あるわけない。」
そういいながらも、私の顔の火照りがおさまることはなかった。

プリ小説オーディオドラマ