第25話

☪殺戮
236
2018/12/23 23:44
私はそう言い放ったと同時に地面を蹴った。
私自身、驚くくらいに体が軽くて二、三回蹴っただけでおじさん達の目の前まで着く。
男性
なっ…!!
夜霧 涼
バイバイ、おじさん。
ベキッ…!
男性
ぎゃああああぁぁぁ!!!!!
ナイフを持っていたおじさんの腕を掴み、先が喉に向くようにすると、乾いた音がした。
そのまま私はおじさんの腕を喉に近づけ、ナイフを喉元に突き立てた。
男性
っぁ…
男性
ちょ、調子に乗るなぁぁぁ!!!!!
おじさんがナイフを振り上げた。
私は喉に突き立てたナイフを引き抜くと、返り血が私にかかる。でも、そんなのを気にせずに私はおじさんに向かってナイフを振り回す。
男性
い”っ…!?
地面にナイフが握られているおじさんの手がボトリと落ちた。
そして、ナイフを胸のところに突き立てるとおじさんは動かなくなった。
服の裾で血を拭う。
紅い光が銀色だったナイフの色を紅く染める。
辺りが騒がしくなって”大人”が集まってくる。
男性
捕まえろ!!!
男性
殺してもいい!これ以上、被害を拡大させるな!!!
夜霧 真
……。
被害…?なぁにそれ?
私は…”大人”なんて大っ嫌い。
夜霧 真
みんなみんな消えちゃえ。
そう呟くと私はナイフ片手に駆け出した。
みんなが真っ赤に染まり、地面に倒れていく。
広場が静まった頃、私は建物へと入った。
男と女の大人と私と同じくらいの男の子がいる。
男性
お前らは他の部屋にいろ!
女性
あなた!大丈夫なの!?
悲鳴に近い女の叫び声。
男は包丁を私に向けている。でも、甘い。
男が返事をする前にお腹にナイフを刺してあげた。
女の悲鳴が響く。
女の横に立っている男の子は目を見開いて、目の前の光景をじっと見つめていた。
すると…
女性
春輝、今すぐ逃げて!ずっと走って山を降りるのよ!
男の子
で、でも…!
女性
いいから早く!!!
女の頼みに小さく頷いた男の子は外へ向かう。
私はそこを刺そうとしたが、男が持っていたナイフを手にした女が私を刺そうとする。
だから、追いかけられなかった。
勿論、その女は最後は息を引き取った。
そこからはあまり記憶が残っていない。
でも…村を全て壊した最後に…
私は紅に染まって、広場中央で笑ったいた。
そのことだけは覚えていた。
気付くと知らない場所にいた。綺麗で明るい場所。
頭を押さえて、ゆっくりと起き上がる。
私の顔を見た女の人が嬉しそうな顔をする。
女性
おはよう。
夜霧 真
おは、よう…?
女性
初めまして、私はあなたのお母さん。
藍川紗織さおり。よろしくね。
夜霧 真
お母さん…?
藍川 紗織
ええ、これからは温かい場所で家族のみんなで暮らすの。辛い思いをさせてごめんなさい…。
辛い思いなんてどうでもいい。
それよりも聞いたことのない言葉が気になった。
夜霧 真
家族?
藍川 紗織
そう、家族。あなたのお父さんやお兄さんもいる。ねぇ、お名前は?本来なら私が付けるべきだったのだけど…
夜霧 真
……真。夜霧真。
藍川 紗織
真…。いい名前ね。でも、夜霧家の者だということは隠さないといけない。これからは”藍川真”よ。
そう言い、お母さんは優しい笑顔で笑った。
お母さんの手が私の手を握る。
その手は温かくて、優しくて…
私が感じたことのない感覚だった。
お母さんに背負われ、私は白に赤い十字架が書かれている建物を後にした。
そうして、私は”藍川真”になった。
そのとき…いや、お母さんに会ったときには、私からあの”名無し村”の記憶は失い、私がしでかしたことも全く覚えていなかった……。

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