私はそう言い放ったと同時に地面を蹴った。
私自身、驚くくらいに体が軽くて二、三回蹴っただけでおじさん達の目の前まで着く。
ベキッ…!
ナイフを持っていたおじさんの腕を掴み、先が喉に向くようにすると、乾いた音がした。
そのまま私はおじさんの腕を喉に近づけ、ナイフを喉元に突き立てた。
おじさんがナイフを振り上げた。
私は喉に突き立てたナイフを引き抜くと、返り血が私にかかる。でも、そんなのを気にせずに私はおじさんに向かってナイフを振り回す。
地面にナイフが握られているおじさんの手がボトリと落ちた。
そして、ナイフを胸のところに突き立てるとおじさんは動かなくなった。
服の裾で血を拭う。
紅い光が銀色だったナイフの色を紅く染める。
辺りが騒がしくなって”大人”が集まってくる。
被害…?なぁにそれ?
私は…”大人”なんて大っ嫌い。
そう呟くと私はナイフ片手に駆け出した。
みんなが真っ赤に染まり、地面に倒れていく。
広場が静まった頃、私は建物へと入った。
男と女の大人と私と同じくらいの男の子がいる。
悲鳴に近い女の叫び声。
男は包丁を私に向けている。でも、甘い。
男が返事をする前にお腹にナイフを刺してあげた。
女の悲鳴が響く。
女の横に立っている男の子は目を見開いて、目の前の光景をじっと見つめていた。
すると…
女の頼みに小さく頷いた男の子は外へ向かう。
私はそこを刺そうとしたが、男が持っていたナイフを手にした女が私を刺そうとする。
だから、追いかけられなかった。
勿論、その女は最後は息を引き取った。
そこからはあまり記憶が残っていない。
でも…村を全て壊した最後に…
私は紅に染まって、広場中央で笑ったいた。
そのことだけは覚えていた。
気付くと知らない場所にいた。綺麗で明るい場所。
頭を押さえて、ゆっくりと起き上がる。
私の顔を見た女の人が嬉しそうな顔をする。
辛い思いなんてどうでもいい。
それよりも聞いたことのない言葉が気になった。
そう言い、お母さんは優しい笑顔で笑った。
お母さんの手が私の手を握る。
その手は温かくて、優しくて…
私が感じたことのない感覚だった。
お母さんに背負われ、私は白に赤い十字架が書かれている建物を後にした。
そうして、私は”藍川真”になった。
そのとき…いや、お母さんに会ったときには、私からあの”名無し村”の記憶は失い、私がしでかしたことも全く覚えていなかった……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。