先生の情緒がおかしい。というか泣いている。ポロポロと。少し怖いが先生がずっと不本意ながら生徒を騙し続けてきていたとなれば気持ちが分からなくもない。先生の記憶がなんで私の記憶にあるのかは分からないけれど…
慰めたいという気持ちとまだなにかしてくるかもしれないという気持ちと先生ってこんなんだっけという気持ちが複雑に絡まりあって、自分の気持ちがよく分からない。
ガチャ
扉から先生が言う"先輩"という人が来た。
私の声を遮って先生に話しかける。少し圧迫的なその声に少し嫌な予感がした。そしてこの"先輩"という人はそこまで好きじゃない。というか嫌いまであるほどだ。先生もそう思っているのではないか…少なくとも好感はもっていないだろう。
何故かすごく焦っている。さっきも来ていたのにさっきとは比にならないほどに焦っている。泣いている所を見られたからだろうか?それともまた別の理由が…?
先生が急に倒れた。多分、"先輩"の仕業なんだろう。そうなのであれば何故なのか…?"先輩"と先生は味方どうしなのでは無いのか…?私はその光景を目の当たりにして、助けることも逃げることも出来なかった。
"先輩"は先生の私に同情しているというところがいけないと思っているのか?それはダメな事なのか…?同情するくらい…仕事をしているのであればいいのではないか…?
先生が何とか声を出している。こんな姿を私は見た事がなかった。先生はなんでも出来るイメージがあった…けれど今は…
先生がさっきまで意識があったのにも関わらず、急に意識を失ったようにグダッとなってしまった。
私はびっくりしすぎて声が出なかった。だからといって逃げることも出来なかった。ただ、目の前で起こったことの処理がどうも追いつかなくて、そして信じられなくて立ち尽くすことしか出来なかった。
"先輩"何も言わなかった。そして気づくと力が入らなくなって———
しくじった。油断した。柚月ちゃんは…居ない。ここはどこだ。何年もここにいるがここには来たことが無さそうだ。先輩……東先生は少し不思議な感じがして抵抗が上手くできない……もしかしたら俺だけ記憶があるから抵抗出来ないのかもしれないが……まぁいい。とりあえず柚月ちゃんを…!……なんで俺は柚月ちゃんを探しているのだろうか。別にこれから関わらない可能性だって……いや、ここまでやったら最後まで見届けよう。何か。何か分からないけれど柚月ちゃんは他の子とは違う気がする。
扉を開けると通路があった。キョロキョロしているとここはさっきまで俺がいた場所の隣だと気づいた。
さっきまで俺らがいた。柚月ちゃんがいたところに、まだいるかもしれない。
予想通り柚月ちゃんがいた。だが気を失っている。そして……
東先生もいた。だがここでは"先輩"だ。大抵の人は記憶がなくなっていて、先輩後輩の関係ということになっている。東先生は俺が元生徒だったことを知らない……いや、忘れている。だから余計に、先生と呼べない。下手に記憶を戻させられない。
このままだと柚月ちゃんの記憶が消されてしまう。一回消されかけていることから要するに、もう次はないだろう。もう、耐えられることは……
こうするしか、もう、柚月ちゃんが助かる道はないんだと思う。そして、少しでもここに来るのが遅れていたら柚月ちゃんの記憶は消されてしまっていたんだと思う…
そう言うと東先生はドアから出ていった。柚月ちゃんはまだ起きそうにない。まぁ、一日に三回も気を失ってると疲れるか……というか今はもう早朝だ。夜中から一回も寝ずにこんなことしているんだ。
たぶん。柚月ちゃんからしたら嫌われているんだろうな。他の子達もそうだった。俺を殴ったり罵るような目で見たり……まぁそんなものだよな。自分を危険な目にあわせる人にそんな好感なんてもてるはずもない。
流石に大人になっても眠いものは眠い…でもベットは一つ。普段なら別の部屋で寝るが東先生に何されるか分からない。となると柚月ちゃんの近くにいて異変に気づけるようにした方がいい……
そんなことを考えながら柚月ちゃんを端によせ少し離れて同じベットに横たわる。と言っても同じベットに寝ている時点でアウトなきがするが。
俺は案外疲れていたのかすやぁと眠りに着けた。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。