TAKUTO side
スマホが鳴ったのは、
夜もだいぶ深くなってからだった。
画面に出た名前見て、
一瞬だけ、胸の奥がざわっとする。
――セイト。
通話ボタン押す。
声、低い。
張りもない。
…あ、これダメなやつだ。
その一言で、全部わかった。
少し間を置いてから、
できるだけ普通に言う。
電話切る前、
小さく息を吸う音が聞こえた。
――やっぱり、来た。
セイトの家の前に着いたのは、
それから三十分程後。
インターホン押す前に、ドアが開いた。
……ひどい顔。
目の下、うっすら影できてるし、
髪もいつもより雑。
でも、俺の顔見た瞬間。
ほんの一瞬だけ、
肩の力が抜けたのが分かった。
靴脱いで中入る。
部屋は綺麗。
…綺麗すぎるくらい。
ソファに並んで座る。
しばらく、無言。
テレビもつけない。
いつもなら、
どちらか痺れを切らして口を開くけど…
今日は負けない。
待ってるから。
セイトが自分で崩れてくれるのを。
しばらくして、
言いかけて、止まる。
一瞬、間が空く。
声、震えてる。
俺は、何も言わない。
セイトは下を向いて、
拳を、ぎゅっと握ってる。
言葉を探すみたいに、息を吸って。
いつもゆっくり話すセイトからは
想像つかないほどの勢い。
かと思えば
何かに怯えているように弱々しくなる声
この返事が正しいのかわからないが、
セイトの眉が八の字になっていく。
一拍置いて。
来た。
……でも、まだ。
言葉が、途中で落ちる。
ほんと、全部がぐちゃぐちゃ
声がかすれてきてる。
たまに混じって聞こえる喉の締まる音
俯いたままのセイト。
俺は、すぐに言葉を返さなかった。
…返せなかった、の方が近い。
黙ったまま、
その顔を見てた。
目は、合わない。
唇だけ、強く噛んでる。
……こういう時の顔、知ってる。
“耐えてる顔“
しばらくして、
セイトが、恐る恐る顔を上げた。
そのタイミングで、やっと口を開く。
セイトが口を少し開けたまま固まってる。
少しだけ、声を落とす。
セイトの方見る。
真っ直ぐ。
一瞬だけ、
あの声が、頭をよぎる。
飄々としてるくせに、
不思議と、背中を預けられた人。
……でも。
俺は、
引き上げる人じゃない。
だから
受け止める。
どんな形でも。
……絶対に。
しばらく、沈黙。
セイトがゆっくり息を吐く。
……やっと、
助けを求めてくれた。
俺は、即答しない。
少し間違えたら彼が崩れてしまいそうで…
一度だけ小さく息を整える。
ここで言葉を間違えたら、
セイトは本当に壊れる。
セイトは目を逸さなかった。
それだけで、少し安心できた。
セイトの雰囲気が少し緩まった。
座ったままのセイトを立ち上がらせる。
大きく見えた。
背丈じゃなくて、存在が。
もう大丈夫。
セイトは強いから。
荷物をまとめた、その時。
少し間を置いて。
その言葉に、動きが止まる。
……って言いながら、
気づいたら、ソファに戻ってた。
いつの間にか、
自分の上着も脱いでた。
朝。
目、覚ましたら、
見慣れた天井。
隣で半分口が開いたまま
安心しきった寝顔の大男。
……はぁ。
結局、
一緒に朝からセイトの家から出勤した俺。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。