湊さんがこの家を出ていって半年が過ぎようとしている。
英や、よくコインランドリーに通っていた人達に湊さんがどこにいるかを聞いても居場所がつかめない。
──── 湊さんに会いたい ────
「 しんちゃーん、大丈夫かー? 」
「 英かよ。」
「 …はぁ、もう晃さんのこと忘れて違う人探したら? 」
わからないけど、とてもイラついてしまって英の胸ぐらを掴んでしまった。
「 っ!お前正気か?? 」
「 …あー、ごめん忘れて。晃さん以外興味ないもんな。」
「 あ、あぁ。」
「 シン…お前、大丈夫か? 」
「 ご飯とか、ろくに食べてないだろ。」
食べれるわけないだろ。
湊さんと食べるご飯しか、美味しく感じないんだよ。
湊さんと一緒に食べないとどんなに濃くしても味がしないんだよ。
俺がいないと生きていけないようにしていたはずなのに、それは無意味で。
逆に俺の方が湊さんがいないと生きていけなくなっていた。
「 っ…あー、もう。」
「 ここ、来るか? 」
英は腕を広げてそう言った。
少し抵抗はあったけど、誰かに抱きしめられていたくて英の腕の中におさまった。
「 柊くんには内緒ね、」
「 お前も、っな。」
「 おう、」
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そして、翌日。
「 英、そばにいてくれてありがとう。」
「 なんか言い方きもいけど…いいってことよ。」
「 また泊まりくるから。」
「 おう。またな、」
「 じゃーね…しんちゃ、…っ、!」
「 …どうした? 」
「 あ、きら、さん、」
あ、きら?、
あきら、って、あの、湊晃?
「 み…なとさん、」
「 、よ、よう。」
「 こ、れ、返しにきた、」
「 …カメ、ラ? 」
「 じゃ、あ、な。」
「 待って晃さん、 」
「 俺帰るから、ふたりで話しなよ。」
「 いや、いいって、明日香。」
「 シンの事見て心配だと思わないの?あれは全部晃さんのせい。だから、ちゃんと話してきなよ。」
「 …わかった、よ。」
「 じゃあ、ね。」
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今、湊さんが俺の正面に座っている。
「 あ、えと、シン、お腹すいてる? 」
「 い、え、すいてないです、」
「 あの、みなとさん、」
言いたいことは沢山あるけど、とにかく今1番伝えたいのは…
「 俺、今でも湊さんのことすきです、」
「 四六時中ずっと頭から湊さんのことが離れないんです。」
「 なにをしてても湊さんのことばっか考えてて、それに湊さん以外とご飯を食べてももう、味がしない。」
「 俺、湊さんがいないともう無理なんです。」
「 だから、離れないで… 」
湊さんは俺の隣に来てそっと抱きしめてくれた。
ずっと感じたかった湊さんだけの温もりと湊さんの匂いに包まれて、泣いてしまった。
「 泣き虫しんちゃんだ。 」
「 あい…たかったっ、です… 」
「 そっか、ありがとう。」
「 あの…さ、シン、話があるんだけど 」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。