第4話

日常小話そのいち
25
2018/07/18 08:40
ヤマもオチもない、四人の休日を書いた日常的なお話です。
ちょっとは読んでおいてもいいかも?


side Red.

事の発端はジェイドさんだった。

あまり洒落っ気のない服を着ているリンを見兼ねて、

「女の子なんだからもっと着飾ろ!!」

と叫び、街に出てリンの服を買おうと言ってふたりで出かけていった。

すなわちおれは兄貴とふたりで家で留守番。

「このふたりだけっていうのもジェイドさんが来てからは久々だね〜!」

「確かに、思ってみればそうだな」

「じゃあ、久しぶりに久しぶりを重ねて一緒にゲームしよ!!」

「ふwいいぞ〜なにやる?」

「PVP」

「受けて立とうじゃねえか」

この感じも久しぶりだ。

最近は依頼ばかりだったから、こんなふうに普通の日常的な事を複数人ですることがあんまりなかった。

確かにジェイドさんやリンと一緒にいるのも楽しいけど、やっぱり兄貴と2人でいると気を抜いていられる。

今日くらいは甘えてやろうかな!!

―――――

side Green.

今日はすごく良い天気だ。

お出かけ日和、ショッピング日和♪

「まずどこに行こうかな〜♪リンちゃん結構なんでも似合いそうだから悩むな〜」

「私はモノトーンの服が好き」

「ほう?」

リンちゃんは顔もすごく整っているし、髪もきちんと手入れされてて綺麗だ。

やっぱり可愛い服を着せたくなってしまう。

よ〜し、じゃあ目についたところ片っ端から見ていこう!
時間はたくさんあるからね!



「ロリータ系似合うね〜」

「そうかな」

リンちゃんはふわふわのスカートを広げてにへ、と控えめに微笑む。

「やっぱり白い髪だから黒とかかな〜?でもパステルも捨てがたいし…」

さっきからあれこれ試しているけど、ほんとに何でも似合うからかえって悩んでしまう。

そしてなによりこうやって選んでいるのは楽しい。

「ロートもアレキもジェイドも、三人とも普段スーツだから、やっぱり黒あたりじゃないかな」

「そっか、それも考えなきゃね」

たまにリンちゃんも意見を出してくれるから、あまり長時間悩まなくていい。

「じゃあやっぱりこれだね」

「うん、いいと思う」

決まり。

選んだのは、胸元に刺繍の入っている黒のシャツと白のスカート、サスペンダーやそれに合うショートパンツなどのゴスロリを基調とした服。

あとは靴とかアクセサリとかも見たい。

僕の分もね!

「じゃんじゃん行くぞ〜〜!」

「おお〜」

―――――

side Blue.

「っだあああああまた負けたあああああ!!」

「この俺に勝つなんざ100年早え!!」

「さっきは負けたくせにぃ!!」

「なんだと!!?」

こいつとふたりでゲームなんてどれくらいぶりだろう。

最近は仕事やら武器の手入れやらばかりだったからな。たまにはこういう息抜きもいいだろう。

あとは、こいつがいるとなんか毒気を抜かれるというか、ほのぼのとしてくる。

あれだ、アニマルセラピー的な。

大型犬と戯れてるってこんな感じな気がする。

「なんかすごい失礼なこと考えてない??」

「いやまったくそんなことは」

「あ、そんなことより次これやろうぜ」

「なになに?」

誤魔化すようにゲームのパッケージを差し出すとロートがずい、と顔を近づける。

今話題の発電機を直しながらサイコパスな殺人鬼から逃げるというホラゲだ。

「いいねこれ〜!懐かしい!」

賛同してもらえたので次はこれでいいだろう。



「おれ、お先」

ロートが先に脱出しようとする。

「あ?調子に乗んじゃねおま、」

それを見つけ出し追いかける。

が、そこには殺人鬼側が置いた罠があった。

「うぼぁあああああ!!」

「「あっははははwwwwwww」」

案の定引っかかり、ふたりして大爆笑だ。

「っあ、じゃーな兄貴!!!!!」

一度は救出しようとするも思いついたように俺を置いて行くロート。

「てめーー!!!www」

「はははwwwwwww」

ちゃんと引き返してきて俺を救出してからふたりで脱出する。

液晶にはリザルト画面が表示される。

「っふ…ふは…www」

「じわってんじゃねーぞこのww」

「だwっwてwwww」

こうやって馬鹿なことをしてふたりで笑っていられるのがすごく楽しい。

「ふふふ……はぁ〜〜w」

未だ少し笑いを含みながらもロートが息をついて寝転がる。

「少し休憩するか」

「そうしよ……ww」

「まぁだ笑うかww」

久しぶりにホットチョコレートでも作ってやろう。

――――

side white.

街をひとまずぐるっと一周した頃にはもうお昼時だったので、私達はレストランに入った。

「ここおしゃれでいいね〜。今度は4人みんなで来ようよ」

「…ふふ。うん」

ジェイドはいいと思ったところはすぐあの2人とも来たいと言う。

仲のいい証拠だろう。

だけどなんだか、「仲がいい」とは少し違うというか。

この3人なら、自分達は「家族」だとさらっと言ってのけそうな気がする。

私にはまだ、「家族」がどんなものかも、よくわからないけれど。

「ここのスイーツ美味しそう!…あの兄弟喜びそうだなぁ」

そう言うジェイドの目はすごく優しいものだった。

「あの2人は甘いもの好きなの?」

「うん。見かけによらないでしょ?」

「そうだね。とくにアレキ」

意外だった。

ロートはともかくアレキもとは。

なんだかこの人たちのことを新しく知るたびに、少し嬉しくなるのは何故なんだろうか。

「…あなたのこと、あの2人のこと。いっぱい教えてほしい、な」

「!…うん。いいよ!!」

ジェイドは一瞬驚いた顔をして、とびきりの笑顔を見せた。



「…元々僕は野良でやってたんだ。

僕があの2人と出会うまでは、アレキ君とロート君は兄弟2人で今の仕事をしてた。

あの子達、幼い頃に御両親を亡くしているらしくて。

最初の頃のロート君なんか、借りてきた猫みたいに警戒しててさ。

2人だけでいた時期が長かったからか、

あの2人は他人の僕なんかが入り込めないような雰囲気作るときもあってね。

その時は今度からリンちゃんが僕のこと構ってよ」

ジェイドは一息ついてから続けた。

「……あの子達はさ、きっとお互いにとってなくてはならない、自分の片割れなんだろうね」

「何でも屋」なんてしてる人達が普通の人なわけがないと思っていたけれど、

自分がいなかった頃にそんなことがあったのか。

やはり類は友を呼ぶというか、やっぱりみんな何かしら抱えているのだろう。

―――――

side Blue.

「ほいよ。ホットチョコ」

「お!おれ兄貴のホットチョコ好きなんだよね〜!!」

「褒めても何も出ねぇぞ」

このホットチョコレートはジェイドが来る前、俺達がまだ2人だけのときによく作っていたものだ。

気に入ってもらえているのなら、作っていた甲斐があるというもの。

「ふぅ…」

ひと息つく、というのはまさにこういう事だろう。

ホットチョコを啜る音と息を吐く音だけがリビングに響く。

静かだ。

「…あ、ジェイドさん達今頃何してんのかな」

「さぁな。服屋回ってるかスイーツでも食ってんじゃねぇか?」

「あー」

「お前も外出なくてよかったのか?すげぇいい天気だぞ?」

「ん〜…なんか今日はそういう気分じゃないんだよね」

「珍しいな」

「たまには兄貴とごろごろしてんのもいっかなって」

ホットチョコを飲み終えて、マグカップをシンクに持っていくと、

ロートはリビングの日当たりのいい場所に寝転がった。

「あっここあったかい!」

兄貴もこっち、と言わんばかりに手を振る。

まったく、大型犬かってんだ(嬉)。

「お、まじだあったけぇ」

「んふふ…たまにはいいねぇ〜こーゆーひも…」

おお、寝そうだこいつ。

「おやすみ、ロート」

そういって、自分も目を閉じた。

―――――

side Green.

「や〜すっかり夕方になっちゃったねぇ」

「そうだね。ここの夕焼け、綺麗」

「でしょ〜」

結局、あの後もたくさんいろんなものを見て買いこんでしまった。

「あの2人、何してるかな」

リンちゃんがそんな事を言うので

「ゲームでもしてるんじゃないかな?」

と返した。



「ただいま〜」

「…ただいま」

…あれ、珍しくロート君のお出迎えがない。

訝しく思ってリビングに行けば、窓際で寝転ぶ2つの影。

あらまぁ、ひなたぼっこなんてしてる。

とりあえずその光景を写真を撮って荷物をテーブルに置き、そばに行ってみる。

2人して規則正しい寝息をたて、片方の手にはもう片方の手が握られている。

「ほんとに、この子達は…」

まだまだあどけなさの残る寝顔のロート君と、普段からは想像できないくらい穏やかな寝顔のアレキ君。

その顔がどことなく似ていて、兄弟だなぁと感じる。

「…ジェイド」

ぱたぱたと足音を立ててリンちゃんがブランケットを持ってきてくれた。

「あぁ、ありがとね〜」

ぽん、とリンちゃんの頭に手をのせて、この2人にブランケットをかける。


「たまにはいいね。こーゆー日も」

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