…ここは、どこ…?
まっくらな海の底に、どんどん落ちていくような、
まっさおな空の上に、どんどん浮かんでいくような。
不思議な感覚。
(ふわふわ…なんか、きもち、…このまま寝ちゃいそう…)
その刹那、突然意識が覚醒した。
ぱちり。
目が覚めた瞬間コワモテ男性なんて、聞いてない。
…ん?なんか、この、ゴツイ顔の、このマッチョ…、金髪…
んんんんんん???
理解はしてるけど、頭が認めるのを拒んでる。
『……………貴方は、オールマイト…?』
オル「HAHAHA!!そうさ!私がいかにも、オールマイトだ!!」
『……!?!?!?』
ん?ちょっと待てよ。私の中でのオールマイトは、マンガの中のキャラクターで、ん?おかしいな。でも今私が聞いたことに答えてくれたよね…?じゃあこれは現実?私ヒロアカが好きすぎて幻見てる…?
真顔で自分の頬を容赦なくつねるとそれなりに痛かった。
うん、現実だね、うん。
えええええええええ!?!?!?!?
「…少女、…白引少女!」
『はいっ!!…て、なんで名前…?』
オル「すまないが、カバンの中を見させてもらったんだ。」
『…あっ、なるほど。』
ていうか私、何してたんだろう。
『あの…、貴方本当にオールマイトですか…?』
オル「そうだよ!HAHAHA!
改めて白引少女、君のことを教えてくれないか?」
『…っは、はい
私、どこかで倒れてたんですか?』
オル「そうなんだ。ヒーロー活動中にね。
道路で倒れているところを私が発見して、病院に運んだのさ。」
『…あ、ありがとうございます!』
オル「HAHAHA、ヒーローとして当然のことさ!
それから、いくつかの質問に答えてもらえるかな!?」
『はい。』
私が覚えてるのは、いつも通りの授業を受けて、いつも通り家に帰ろうとして、ヒロアカの新刊を書店で見かけて衝動買いして…、歩道で開けて読んでたところまでだ。
オル「まず、君はどうして道路で倒れていたんだい?
覚えているところまで、教えてくれないか?」
『…えぇっと、覚えてなくて…』
『いつも通り帰ってたら、マンガの新刊を見かけて、
衝動買いして歩道で読んでて…そこから何も覚えてないで
す』
オル「そうかそうか。じゃあ、君の個性はなんだい?」
…ん???そうか。私は、本当にヒロアカの世界に来てしまっているらしい。体は元の世界のまま。所持品も手元にあるし、元の世界の記憶も、マンガのあらすじだって覚えてる。つまり、私には個性があるかもしれない…?
『…え、と、個性については…わかり、ません』
オル「、分からない…?」
『、でも、私、ヒーローに、なりたいです。』
オールマイトはやさしく微笑んで、「分かったよ。」と言った。
オル「たくさん努力したまえ!未来の有望なヒーローの卵よ!!」
『…っ、はい!!!』
来たのだ、理屈はわからなくとも、ヒーローを目指せる世界に。わたしは、ここで、強く、強くなりたい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。