第2話

二杯目〜ホットココア one〜
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2017/12/01 13:19
あら?今年初めての恋する
お客様がいらっしゃったようです。

「いらっしゃいませ」

この人は、カフェのオーナーの
千代子さんです。あったかいドリンクを、お客様のために毎日心を込めて
つくります。

「ご注文はお決まりですか?」

「はい…じゃあ、このホットココア
一つ、持ち帰りでください」

「かしこまりました」

お客様は、若い綺麗な女性でした。
どこか不安げな顔をして、
赤いマフラーをゆるく巻いていました。

「おまたせいたしました。
ホットココアお持ち帰りです」

「ありがとうございます」

さあ、お出かけの時間です。
トプン、とホットココアに飛び込んで、女性がハイヒールを響かせて
歩くのと一緒にゆらゆら揺れました。

「あっ…なおくん、おまたせ」

「あ、あゆみちゃん。
あったかい飲み物買えた?」

「うん」

「じゃあ、行こうか」

どうしたのでしょう。
女性…あゆみさんは、ずぅっと
浮かない顔です。
気になったので、カップから
飛び出して、あったかいホットココア
を包んだあったかい両手におでこを
つけました。
うっすら、ゆらゆら、甘い匂いの
湯気の奥に、ココアみたいに
甘いあゆみさんの恋心がみえます。

“なおくん…かっこよく、
なっちゃって…やっぱり、わたしじゃ
ダメかな…”

そんな心の声が、聴こえてきました。

「こうして2人で会うなんて、
久しぶりだね」

「あ、う、うん、六年ぶり、
くらい、かな?」

“ダメだぁ…うまく話せないや”

「あゆみちゃん、すっかり
綺麗になっちゃって、びっくり
したよ。もう、お弁当落としたり、
自由帳が破れちゃったくらいで
泣いちゃうあゆみちゃんじゃ
ないんだね」

「も、もう…」

どうやら、おふたりは久しぶりに
再会した、幼馴染のようです。
そしてあゆみさんは、なおさんに
甘い恋心を抱いているようです。

おふたりはそのまま、夕方の街を
歩いて行きます。

“いつ、気持ち、伝えよう…”

あらら?あゆみさんはどうやら、
なおさんに気持ちを伝えたいみたい
です。わたしには、魔法が使えます。
ですが、直接人の心を動かすことは
できません。わたしができるのは、
小さな小さなお手伝いです。
あゆみさんが、そうしたいと強く
願うのなら、わたしは魔法の力で
お手伝いをします。
それがわたしの、12月限りの
お仕事なのです。

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