第83話

ピアーズ・ニヴァンス『守りたい理由』⑦
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2025/04/19 04:34 更新






避難所に響くヘリの音。
人々のざわめき。

あなたは、支援スタッフの案内に従って、
最後にピアーズの方を向いた。



あなた
ありがとう…ピアーズ。




少し不安げな表情で、それでもしっかりと
お辞儀をしてから、
あなたは人混みの中に消えていった。

ピアーズは、しばらくその背中を見送っていた。

――聞けなかった。連絡先も、何も。

ただの一般人に、軍人である自分が
何かを望むなんて、おこがましい気がして。

それに、彼女は日本へ帰る。安全な場所へ。




クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
行ったか




背後から近づいたクリスが、隣に立つ。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……ええ
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
連絡先、聞けなかったのか?
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……はい
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
情が移るのは、よくあることだ。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
ああいう状況ではな
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……そうですね




言葉少なに答えながら、
ピアーズは胸に渦巻く“未練”を飲み込んだ。



ーー



それからの日々は、いつも通りだった。
訓練、任務、時折の休息。
チームメンバーとの冗談。コーヒーの味。

けれど、ふとした瞬間に思い出してしまう。

笑顔と、拙い英語。
コーヒーを見つめていた横顔。
看板を見上げて笑っていた、あの穏やかな表情。

会話は多くなかったのに――
彼女の姿だけが、やけに鮮明だった。



ーー




ある日。

BSAAの事務室に、数個の小包が届いた。



BSAA隊員
わ、これ日本のじゃないか?
BSAA隊員
おー、なんだこれ、菓子?
BSAA隊員
パッケージがカワイイな
BSAA隊員
しかも手紙もあるぞ。……英語だ




ざわつく隊員たちの中心に、ピアーズもいた。

その時。クリスが手紙を手にして、
ちらりと見せた。



クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
一通はBSAA宛。もう一通……
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
ピアーズ、お前にだ
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……え?




渡された封筒を受け取る。
宛名の筆跡――どこか懐かしい。

ピアーズは深く息を吸ってから、封を切った。

便箋を見た瞬間、思わず吹き出す。




ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
あのキャラ……




あの“キモカワ”な白いキャラクター。
便箋いっぱいにその顔が並んでいた。

それを見ただけで、ふっと笑みがこぼれる。

手紙は英語だった。丁寧で、少し堅さの残る文面。




ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
.....




読み進めるうちに、
ピアーズの頬が少しずつ緩んでいく。

文字の向こうに、あの声と表情が浮かぶ。

でも、それ以上のことは書かれていなかった。
ただのお礼と、感謝。礼儀正しく、控えめな文章。

――やっぱり、彼女らしい。

手紙を畳もうとしたとき。

封筒の奥に、もう一枚、小さなメモ。

目を留めて、そっと引き抜く。

そこには、手書きの文字で、こう書かれていた。



"今度、仕事でアメリカに行きます。"

"もしよかったら……
   お茶でも、どうですか?"



そして、電話番号。

ピアーズの手が、かすかに震えた。



ーー



すぐに電話を取る。
番号を押す指先が、少しだけ早まる。

一度、深呼吸。

コールが鳴る。

応答音のあと、聞こえてきた声。



あなた
……もしもし?



間違いなく、彼女の声だった。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……俺です。ピアーズです
あなた
……わぁ、本当に……




少し驚いたような、けれど嬉しそうな声。

言葉は多くなくても。
互いの想いは、きっと届く。

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