第21話

ラストステージ③
225
2025/02/07 10:02 更新


諸伏景光
あなたの下の名前…?あなたの下の名前?
後ろにいるんだよな…?


一面を見渡してしみても、花しかない。


本当は綺麗なのだろうが、今のオレには不気味としか感じられない。冬の風も相まって、背中に悪寒が走った。


あなたの下の名前
ねぇ…わたしきれい?
諸伏景光
あなたの下の名前…?
どこにいるんだ?オレには見えない…
あなたの下の名前
ねぇ…



あなたの下の名前
わたし、きれい?
諸伏景光
あぁ、綺麗だよ。あなたの下の名前は綺麗だし、
可愛いし、素敵だよ。
諸伏景光
でも、どこにいるの?
あなたの下の名前
そっか…



その時、風がばっと吹いた。


冬に咲く花だろうか。花畑から白い花が舞い上がっている。その辺りを見てみると、人影がある。




オレには、それがあなたの下の名前であるとは思えなかった。思いたくなかった。








でも、オレの目の前にある、人の形をした何かが喋った時にはじめて…


あなたの下の名前
ねぇ…



梵あなたの下の名前だと、認識した。






そのとき、ふと、知らない風景が頭に流れた。


_?_
規則は規則…



_?_
祀られし者は、然るべき場所で
祀られなければならぬ。





_?_
それが例え、望まぬものでも…
 


誰なんだろう。


あなたの下の名前の知り合い…とかなのかな。でも、こんな長いヒゲの人、現実で見たことない…



でも今は、あなたの下の名前…に目を向けていた。
あなたの下の名前
…これが私……


あなたの下の名前
受け入れられる?





あなたの下の名前
ま、できないよね…
諸伏景光
いや、
あなたの下の名前
うそついてる。わかるよ。






嘘?



あなたの下の名前
たたるもまつるも…
本質は変わらない。
諸伏景光
急に、何言って…



違う。



こんなことを言いたいんじゃない。


あなたの下の名前
仏教の経典はね…サンスクリット語って
言語で書かれてるの。
諸伏景光
サンスクリット語…?
あなたの下の名前
有名なの話だと、カルピスの名前の
由来にもなった言語だね。
諸伏景光
へぇ…


って、なに納得したんだろ。


ついつい話に流された。いつもだったら、疑い深く人を観察するようなものなのに。




まるで…オレが、オレじゃないみたい。

あなたの下の名前
サンスクリット語を漢字にすると、
そよぎって書くの。



そよぎ。あなたの下の名前の名字だ。



その言葉を聞いて、オレは…震えた。

例えじゃない。頭の隅々、脳が揺れてて…




何も言えなかった。

あなたの下の名前
わたし、決められてたんだって。


あなたの下の名前
変えられないなって、思っちゃった。


オレが無理にでも変えてやる、とか、オレが代わりになる、なんて言葉が出たくてたまらないのに。


震えて…

あなたの下の名前
終わりは終わり。
諸伏景光
あなたの下の名前…?


やっと、声が出たと思ったのに。

あなたの下の名前
今、ヒロが見えてる私の姿は九相図の中の
最後から3つ目の状態。
 
諸伏景光
あなたの下の名前…




なんで…


あなたの下の名前
会えてよかった。

諸伏景光
あなたの下の名前。
あなたの下の名前
もう、お別れ…
諸伏景光
あなたの下の名前!



諸伏景光
あなたの下の名前はあなたの下の名前でしょ…?
諸伏景光
あなたの下の名前の意思で…決めたの?
あなたの下の名前の意思じゃないなら、オレは…


死んで、あなたの下の名前についていく。



そう言おうと思ったのに、なぜか口が動かない。




さっきから、誰かに止められているみたいだ…オレは
体験したことないけど、たぶん金縛りに近い…。

あなたの下の名前
そうだね…でも…

あなたの下の名前
みんな違ってみんないいって言った人は、
27で自殺してるよ。




金子みすずさん、だったっけ。


有名なそのフレーズは「小鳥とすずと私と」って詩
だったはずだ。





そうか…自殺、してたのか。


大正末期くらいから活躍したんだっけ。戦争が終わる前に亡くなったのは何となく覚えている。でも、どう言う死に方をしたのかまでは知らなかった。









あなたの下の名前が何を言いたいのかは、わかった。



そして、オレは悟った。

あなたの下の名前に何を、どれだけ言っても…






変わらない。






どんなに、生を切望しても死が必ずくる。

それが思いもよらないことだったとしても。
あなたの下の名前
見ててよ…


あなたの下の名前
私が消えた後、空の中で一際輝く星があるから。



諸伏景光
…最後にひとつだけ。
 



 
諸伏景光
もう、会えることはないの?



そう聞いた。



震えていたかもしれない。



頼らなくて、みっともない…そんな顔をしていたかもしれない。




でも…思い出せない。







唯一、思い出せるのは____.



あなたの下の名前
海人のすむ里のしるべにあらなくに…
 
あなたの下の名前
怨みむとのみ人のいふらむ…






その時発せられた声は、艶があって日本人特有の響きがあって…






美しかった、と言うことだけだった。



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