第253話

「2P」VSその10
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2020/11/10 01:10
「2P」VSその10


黒曜の城、中央階段を駆け上り廊下を走る
その間にも背後では魔法による爆発音が鳴り響く

始)(後ろを振り向く)
隼)春なら大丈夫だよ、もちろん海や皆んなもね。
始)...そうだな、俺たちは負けない。
隼)うん、勝つよ。

廊下の先に大きな扉が見えた
豪華な装飾のされた扉の先に目指すものがある
そう確信した

始)開けるぞ。

始が扉に触れると扉が勝手に開く
ギギギと重厚な音を立てて開いたその先は
質素で赤い絨毯だけが敷かれた広い部屋
絨毯の先には玉座、そしてそこに座すのは

ムツキ)来たか。
始)お前が...俺の..
隼)やっぱり、存在としては「同じ」なんだね。
ムツキ)ああ、俺も..そいつもな。
(始の背後に視線を向ける)

始)(勢いよく振り向いて)隼!!
隼)!!

隼の背後からスゥと腕が伸び隼を捉えた

シモツキ)そう、僕も「同じ」なんだよw

隼に抱きついたシモツキが嬉しそうに笑う

始)離れろ!

隼を助けようとするが見えない壁に阻まれ
近づく事が出来ない

シモツキ)ふふw 慌てる必要はないよ?
どうせ最後は皆んな同じなんだからさ。
隼)..どうゆう意味かな?
シモツキ)僕たちが君たちを倒し世界を変える
って事だよ。
始)世界を変える?

ムツキ)仮想現実、この世界はそう呼ばれている
だがそれはお前たちが勝手に決めた事。
シモツキ)僕たちにとってはこの世界こそが現実で
君たちの世界こそ空想の世界。

隼)書き換えようと言うのかな?
シモツキ)その表現でいいと思うよ?
ムツキ)俺たちはお前たち世界を消して
新たな世界となる。

始)その為だけに関係ない人を巻き込んだのか。
シモツキ)言ったでしょ、最後は同じだって
順番が少し早くなっただけだよ。

玉座から立ち上がったムツキが剣を抜く
それに合わせて始も剣を抜いた

ムツキ)願いのために、お前たちには消えてもらう。
始)悪いが、
その願いを叶えさせるわけにはいかない。
隼)君たちを止めてみせるよ。

シモツキ)ふふw それは退屈せずにすみそうだ。


ムツキ)俺は1
シモツキ)僕は0、2つがあれば世界が生まれる。

ムツキ)さぁ、始めようか現実を超える現実を。
始)来い!

シモツキ)僕たちは場所を変えようか、
ここじゃ狭すぎるでしょ?
隼)もちろん、構わないよ。
シモツキ)それじゃあ行こうか。

シモツキの魔法で空間が歪みゲートが開く
ついて来いと言うかのように先に潜るシモツキ

始)隼....勝つぞ。
隼)うん...負けないよ、僕は魔王様だからね。

シモツキの後を追ってゲートを潜る
始の決意を共に背負って行く
「勝つ」自分たちの世界のためにそして何より
信じてくれる仲間のためにも負けられないから

隼)これは...予想外だったな。

ゲートを越えた先は先ほどまで自分達がいた
黒曜の城の上空だった シモツキの力なのか、
透明な床があり立つことが出来る

シモツキ)気兼ねなく魔法が使えるでしょ。
隼)確かに、遠慮は要らないみたいだね。
シモツキ)手を抜いてたから負けたなんて
言われたくないからね。
隼)君相手に手は抜かないよ..いや、抜けないかな。
シモツキ)そう言ってもらえるのは素直に嬉しいね。

戯けたように話す姿は隙だらけに見えるが
逆に全く隙がない、それは隼も同じ
なので探り合いの会話が続く..

それを壊し仕掛けたのは隼だった

凍りつく空気の中でふわりと白い花が咲く
雪で作られたその花ははらりと散って花弁となり
舞い上がる

隼)雪月花。

隼の声で雪の花弁がシモツキへと吹き付ける

シモツキ)...エーラ。

シモツキの背に白い翼が現れその羽ばたきで
雪の花弁を振り払う

隼)嫌な天使様だね。
シモツキ)平等だよ?僕は。
与えるのが幸福とは限らないけどね。

そう言って笑うシモツキ
今度はこちらの番と手をかざして

シモツキ)トニトルス。

かざしたでの先から暗雲が広がり
カッ!と雷光が走り雷鳴が轟く

隼)反転鏡。

隼の前に鏡のような壁が現れ雷を弾き返す
シモツキはそれを振り払いかき消した

シモツキ)そっちは忍者?変な魔法ばかりだね。
隼)ふふw 意外と面白いんだよ?

シモツキ)でも、このままじゃ削り合いだ
それで勝ってもつまらないよね。
隼)なにが言いたいのかな?
シモツキ)だからこうしよう、
お互い最強の魔法をぶつけるのはどうかな?
隼)...いいよ、終わらせよう。

2人の空気が変わる
互いの全てをかけた魔法を発動させた

隼)夢幻氷牢。
シモツキ)エクリプス。

隼が放つのは絶対零度の炎
白い炎が触れるものを凍てつかせ時を止める

シモツキが放つのは全てを飲み込む腐食の魔法
光さえも吸い込むそれは漆黒の闇

ドカァァアン!!

互いの魔法がぶつかり合い爆発が起こる
視界が悪いこの状況下
相手の場所など分かるはずがない..はずだった

ドン!とお腹に衝撃が走る
ジワリと赤く染まるのは自分の血
相手の剣に刺されたのは隼--

シモツキ)驚いた?
魔法で決着をつけるとは一言も言ってないからね。

耳元でシモツキの声がする
痛みと熱がどんどん広がっていく気がした

隼)っ... そうだね、僕も魔法が一度だけだと
言った覚えはないよ?

ガシッとシモツキの腕を掴み逃さない

シモツキ)何を...
隼)夢幻氷牢の夢幻は無限って事だよ...!
シモツキ)!?

シモツキの背後で白い炎が燃え上がる
全ての熱を奪う炎に焼かれる

シモツキ)ぐっ、ぁあ!!
隼)ッう、逃がさないよ。

剣を抜き逃れようとするシモツキを
逃がすまいと腕を掴んだ手に力を込める
少しの時が長く感じ...そして..

シモツキ)...ごめんね、ムツキ...

膝から崩れ落ちるシモツキ
隼を刺した剣も霧散して消えた

隼)僕の勝ちだよ...!?

シモツキの力が尽きたせいか透明な床が消え去り
2人は宙へと放り出されたように落下する

隼)っ、、
シモツキ)...ゲート。

シモツキが消え入りそうな声でゲートを開く
それは落下する隼の真下に開いて

シモツキ)バイバイ。
隼)待っ!

隼がゲートに入ったのを見届けて目を閉じる

シモツキ)楽しかったよ。

シモツキはそのまま意識を手放した



「2P」VSその11に続く

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