心臓の近くに入ったひびは、
今までのものと違った。
浅くない。
見ただけで分かる。
胸元の皮膚に走った亀裂の奥で、
青白い光が明滅している。
まるで、
呼吸するたびに星空が揺れてるみたいだった。
苦しい。
私は胸を押さえたまま、
うまく息が吸えなくなる。
談話室のみんなの顔がぼやける。
怖い。
また壊れる。
また身体が減る。
嫌だ。
そう思った瞬間。
ひびがさらに広がった。
誰かの声。
返事をしようとしても何を言っているから聞こえない。
喉から星屑が零れた。
青い光が膝の上に落ちていく。
嫌。
こんなの見られたくない。
私は反射的に身体を丸めた。
すると、
真正面から声が飛んできた。
今度は、ちゃんと聞こえた。
ぷりっつだった。
私はびくっと肩を揺らす。
珍しく、
少しゆっくりな話し方だった。
その言葉が胸に刺さる。
一人。
私はずっと、
一人で耐えるものだと思ってた。
苦しくても。
痛くても。
“平気”って笑わなきゃいけないって。
でも。
胸の奥がぐらっと揺れた。
泣いたらまた悪化する。
分かってるのに。
視界が滲む。
こんなの無理だよ。
冷静な声。
でも、それが今は
すごく安心した。
私は震えながら息を吸う。
うまく入らない。
胸が痛い。
それでも、もう一回。
ゆっくり吐く。
そのたびに、
星屑が少し零れる。
でも。
さっきみたいに、
砕けない。
私はぼんやり、
透けた指先を見た。
すると。
そっと。
毛布越しに、
肩へ何かが触れた。
ぷりっつだった。
直接じゃない。
崩れないように。
でもちゃんと、
そこにいるって分かった。
小さな声。
私は思わず笑いそうになる。
この人、
私に“無理して言うな”って言ったくせに。
自分は言うんだ。
でも不思議だった。
さっきまで怖かったはずなのに、今は少しだけ。
息がしやすい。
すると。
胸元から零れていた星屑が、
ゆっくり減っていく。
談話室の空気が、
少し緩んだ。
あっきぃが心配そうに顔を覗き込んでくる
私は自分の胸元を見る。
ひびは残ってる。
透けた部分も戻らない。
でも、広がってない。
すると、
けちゃくんが毛布に埋もれながら笑う。
その言葉に、
私は少しだけ俯く。
もし本当にそうなら。
私は今まで、
どれだけ自分を壊してきたんだろう。
その時。
停電していた談話室の電気が、
ぱっと戻った。
急な明るさに目を細める。
白い光。
見慣れた病院の壁。
でも。
私は気づいてしまった。
テーブルの上に、
小さな星屑の破片が残ってる。
さっき、
私の身体から砕けたもの。
戻らない。
二度と。
その現実に、
胸がきゅっと痛んだ。
ワタシナニカイテタッケ
読まなきゃ損
私のより絶対こっち読んだ方が良い











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。