第10話

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2025/12/08 13:03 更新




















 自動販売機の前に着くと、長尾もちょうど飲み物を買っているところやった。


 僕に気づくと、長尾は『少し話さへん?』と声をかけてきた。
道枝駿佑
……うん

 僕はお茶のペットボトルを購入してから、廊下の隅の方で待っていた長尾の隣に立つ。
長尾謙杜
あのさ、みっちー

 声がいつもよりも硬い気がして、身構えてまう。
長尾謙杜
最近さ、大丈夫そう?
道枝駿佑
え?
長尾謙杜
みっちー、思い詰めた顔してるから。……理由はわかるけど

 彼もメンバーやから、理由がなにかはわかっているはずや。


 でも、彼は自分から理由の詳細を話そうとしなかった。
道枝駿佑
……どっちかの味方をしたいわけやないんよ

 でも結局流されて、恭平を1人にするような状況になっている。
道枝駿佑
俺が何かされたわけやないのに。やけど、自分に矛先が向くかもって思うと、怖くてなんもできひんくて
 この件の主犯はメンバーなはずやのに、そのメンバーのことを恐れるなんて、自分が弱くて腹立たしい。
 

 でも、恭平達の件で溜め込んでいた思いを口にするんは、初めてやった。


 言葉にすることで、自分の中にある感情の形が見えてくる。
道枝駿佑
長尾は、恭平と今はどうなん?
長尾謙杜
メールのやり取りはするんやけど、みっちー達の仲が戻るまでは、メンバーの前で恭平に話しかけるのは辞めておこうって思ってる。その方がメンバーの為にも恭平の為にもええかなって。無理に話しかけるより、俺の立場やったら、そっとしておいたほうがいいのかなって。
道枝駿佑
そっか。でも俺は、やっぱりこのままは嫌やな
長尾謙杜
うん
道枝駿佑
楽しかった頃に戻りたい

 話を切り出すことは怖いし、できれば平穏に過ごしたい。


 話してもお互いが納得する結果にならへんくて、以前のように一緒には居られなくなる可能性だってある。


 けれど気まずい思いを抱えながら何もせずにいたら、いずれ後悔をすることになるかもしれへん。


 最悪、脱退という形になるかもしれへん。
道枝駿佑
近いうちに、みんなと話してみる
長尾謙杜
……そっか、なんか余計な口出ししてごめんな
道枝駿佑
ううん。全然関係あらへんのに気にかけてくれてありがとう、長尾。大橋くんとか丈くんとかにも、申し訳ないな
長尾謙杜
せやな〜、あの2人もほんまは恭平と話ししたいはずやのに。メンバーと場の空気を考えての行動やからな
道枝駿佑
ほんま、ありがとう。大橋くんも丈くんも長尾も

 お礼を言うと、長尾が安堵したように柔らかく微笑んだ。




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