其れから数ヶ月 、強化された肉体は
恐ろしく簡単に『 兵器 』の役を全うし続けた 。
人狼の個性保持者の近親婚による多数の暴走体の殲滅 。
難民虐殺を企む組織の破壊 。
半不死異能者 ” WASP ” の実験協力 、
及び不眠不休の決闘 。
二度と癒えぬ傷を負いつつも 、どれも大した事は無い 。
本物の『 兵器 』だ 。
……とか云っている此奴は只の痩せ我慢だ 。
本当は怖くて仕方が無い事位識っている 。
だから何時も云う「 俺は悪だ 」と 。
そうしたら返される 、「 私は平等ありたいです 」
と……
もう其れは定番で 、決まり言葉で 、
似合わぬ倖せを産む 。
だが最近 、奴はこう返す様になった 。
未だ 、俺は此れに「 そうか 」としか返せていない 。
或る日の夜だった 。
徐々眠りにつこうとした其の時 、
部屋の扉が叩敲された 。
こんな時間に誰だと溜息を吐く 。
其れを部屋に置いていき 、
以前は重く感じていた扉を躊躇無く開ける 。
否 、本当に誰?
やたら色白に見える其奴は思考する仕草をする 。
実際に思考しているのかは定かでは無いし 、
抑々興味すら湧かせて貰えない 。
薄ら笑みが暗い廊下に不気味に浮かぶ 。
厭な奴だな 、
本能的に此奴の凡てを否定したい気分だ 。
否 、気分…と云うより行動か 。
「 すべき 」と云う事か 。
何時かの為に盗んでおいた短刀なら引き出しの中だか 、、、、、、
此の肉体を授かっているのにも関わらず 、
此奴を倒すイメージが湧かない 。
……若しや 、福沢か 、、?
福沢は俺を扶ける準備を 、
此の一年間していたと云う事か……?
そんな昔から心強く 、優しく 、不器用な唯一の友を…
俺は 、俺は…………!!
懐かしい友の顔を思い出す 。
そして次に頭に浮かんだのは……
其奴は記憶を探る様に目だけで上を見回す 。
此の一言が大層気に入ったのか 、
其奴は目を細め嗤った 。
ずっと立っているのもなんだろう 。
俺は背の低い机の前に座る 。
机は引き出しがついている種類だ 。
そう 、 ” 引き出し ” ………… 。
短刀が入っている引き出しだ 。
俺はカタリと引き出しを引き 、
中に或る其れに手を掛ける 。
全く 、危うく流される処だった 。
莫迦め 、其れを云われて離す奴が居たものか 。
両者 、睨み合いが数秒続く 。
せめて信頼のおける様な面構えの奴が良かったが
今は此奴を頼るしかない 。
此の好機を逃す訳にはいかないだろう 。
今更だが 、福沢じゃあなかったか 、、、
変な処では気を遣う 。
此奴 、顔からしても日本人じゃあないな 。
嗚呼本当に気味が悪い 。
此奴に着いて往く事も 、先ず此奴が此処に居る事も……
悪いが此奴の存在自体が
背筋をずっと撫でてくる様で気色悪い 。
其れから此奴は驚く程スムーズな案内をしてみせた 。
当然其れでも警戒は解かなかったし 、
触れさせもしなかったので 、
死角からの攻撃 、意識外からの攻撃でない限りは
此奴の罠には掛からなかったであろう 。
因みにご察しの通り 、
保護先とは闇医者と其の妻(?)と其の用心棒と其の居候
だった 。泡吹いて倒れるかと思った 。
一言文句を云ってやろうと振り返ると其処には
誰も居らず 、礼すらも云わせて貰えなかった 。
其の後は福沢とギスギスしたりまぁ色々あった 。
其のまた後は識っての通り 。
然し気がかりなのは
公安・政府に残された他の異能者だ 。
一度種田に出会ったものの其れは疾過ぎる再会で 、
実行には移せなかった 。
だが運命とは突然訪れる 。
我々の時計は時を経て 、偶然と必然の上 、
漸く動き出したのだ 。
次回 「 運命の時計針たち 」
【 +α 】
〜 結局ドスくんは何だったの〜〜??? 〜
只のマジの気紛れです 。
ですが福地と云う圧倒的な人間を失うのは異能力者
として痛手だし 、手を貸しておくのも悪くないっていう
只の未来投資ですね 。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!