家に帰りたいよ……
ここにいると、自分の病気について深く考えてしまう。
最近は樹吹もあまり来てくれない。
今は多分忙しいんじゃないのかな。
樹吹は塾にも行ってるし……
だから……家に帰りたい。
もう私が長くないことは分かってるの。
最近は倒れてばかりだし。
いつ死んでもおかしくないんだよね?
なら、好きにさせてよ。
残りの人生、ベッドに縛り付けられて過ごせって言うの?
どうせ、治らないなら…好きにさせて。
今生きてるんだから、
やりたいことやらせて。
好きなことさせて。
好きな人と過ごさせて。
好きな場所にいさせて。
ダメ?
私はそんなことも許されないの?
ねぇ、私がなんか悪いことした?
なんでこんなに苦しまないといけないの?
あと少しなんだから、幸せに過ごさせてよ。
病気のこと忘れるくらい好きにさせて。
お母さん?
お母さんがそんなこと言ってくれるなんて思わなかった。
いい。
よかった……
でも、こんなに許可してくれるなんて……私は本当にあと少しなんだな。
私は改めて、そう実感した。
クリスマス、楽しみだな。
多分、2人で過ごす最初で最後のクリスマスになる。
私……あと少しって、どれだけ生きられるのかな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!