休日の午後。
外では静かに雨が降っていた。僕は傘を片手に、彼の部屋を訪れていた。
彼の部屋はいつものように、散らかったゲーム機やギターが置かれていて、生活感に満ちている。
部屋に入ってすぐ、🎸さんは慌てて机に置いていたものを隠そうとした。
珍しく狼狽えるその姿に、あなたは思わず笑ってしまう。
彼の制止を振り切って覗き込んだそこには、一冊のスケッチブック。
そして、そのページに描かれていたのは
——僕自身だった。
目を見開いたまま、それ以上の言葉が出てこない。
普段ふざけてばかりの🎸さんが、驚くほど丁寧な線で、真剣に描いた僕の姿。
笑っている横顔も、少し伏せたまつ毛も、彼にしか気づけない細やかな仕草までがそこにあった。
やっと声を出すと、彼は耳まで赤くしながら、苦笑いを浮かべた。
彼は少し恥ずかしそうに言葉を紡ぎ紡ぎと話す。
軽く言ったつもりなのかもしれない。
でもその瞳は冗談なんて一つもなく、真っ直ぐにこちらを見ていた。
胸の奥が熱くなり、言葉を探す前に涙がにじんでしまう。
慌てたように、彼はペンを置いて立ち上がり、僕の肩にそっと触れた。
困ったように笑いながら、けれどその手はとても優しかった。
静かな雨音が部屋を包む。
彼の言葉が一つひとつ、心の奥に染み込んでいく。
🎸さんは少し息を吸い、照れたように視線を逸らしながら続けた。
涙を拭って頷くと、彼はようやく安心したように微笑んだ。
その笑顔は、僕の知っているどの🎸さんよりも穏やかで、温かかった。
——この一枚を、僕は一生忘れない。
彼がくれた時間も、言葉も、温もりも。
すべてがかけがえのない宝物になるのだと、強く思った。
ーおまけー【忘れられない一枚 その後】
スケッチブックから外して渡された絵を、大事そうに抱えたまま、僕は部屋の真ん中で立ち尽くしていた。
🎸さんはソファに座って腕を組み、少し照れたように僕を見上げていた。
改めて絵を見つめると、胸の奥がじんわり温かくなる。
だけど同時に、こんなに大切なものをどこに置いたらいいのか、決められないでいた。
提案するものが次々と却下され、思わず笑ってしまう。
真っ赤になった彼の顔を見て、堪えきれずに声を上げて笑った。その笑い声に釣られるように、🎸さんも少しだけ苦笑していた。
しばらく考えてから、彼はふと真剣な顔になり、絵を指差した。
少し照れたように視線を落としながら、彼は続ける。
その言葉に胸が熱くなる。
そう答えると、彼はほっとしたように笑った。
雨音の静かな部屋に、その一言が溶けていく。
抱えた絵の温もりが、彼の想いそのもののように感じられて、胸がいっぱいになった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。