第4話

忘れられない1枚
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2025/08/19 11:07 更新
休日の午後。
外では静かに雨が降っていた。僕は傘を片手に、彼の部屋を訪れていた。
彼の部屋はいつものように、散らかったゲーム機やギターが置かれていて、生活感に満ちている。
🎸
……あ、ちょっと待って!
部屋に入ってすぐ、🎸さんは慌てて机に置いていたものを隠そうとした。
珍しく狼狽えるその姿に、あなたは思わず笑ってしまう。
🐑
どうしたの?
🐑
えっちな本でも出しっぱなしだった?笑
🎸
ち、違うし!
彼の制止を振り切って覗き込んだそこには、一冊のスケッチブック。
そして、そのページに描かれていたのは
——僕自身だった。
🐑
これってもしかして僕…?
目を見開いたまま、それ以上の言葉が出てこない。
普段ふざけてばかりの🎸さんが、驚くほど丁寧な線で、真剣に描いた僕の姿。
笑っている横顔も、少し伏せたまつ毛も、彼にしか気づけない細やかな仕草までがそこにあった。
🐑
……いつの間に、これを?
やっと声を出すと、彼は耳まで赤くしながら、苦笑いを浮かべた。
🎸
見られたくなかったんだけどな……。
彼は少し恥ずかしそうに言葉を紡ぎ紡ぎと話す。
🎸
俺さ、ひろくんといるとき、なんか無性に描きたくなるんだよ。
🎸
上手く言えないけど、君の笑ってる顔とか、真剣な顔とか……全部、俺にとっては特別だから
軽く言ったつもりなのかもしれない。
でもその瞳は冗談なんて一つもなく、真っ直ぐにこちらを見ていた。

胸の奥が熱くなり、言葉を探す前に涙がにじんでしまう。
慌てたように、彼はペンを置いて立ち上がり、僕の肩にそっと触れた。
🎸
泣くなよ……そんな顔させたくて描いたんじゃないんだからさ笑
困ったように笑いながら、けれどその手はとても優しかった。
🎸
ひろくんが笑ってくれるのが、俺にとっては一番のご褒美なんだよ
静かな雨音が部屋を包む。
彼の言葉が一つひとつ、心の奥に染み込んでいく。
🎸
……ねぇ
🎸さんは少し息を吸い、照れたように視線を逸らしながら続けた。
🎸
これ、完成したら……ずっと君にあげたい。俺の気持ちごと、受け取ってほしい
🐑
もちろん!
涙を拭って頷くと、彼はようやく安心したように微笑んだ。
その笑顔は、僕の知っているどの🎸さんよりも穏やかで、温かかった。

——この一枚を、僕は一生忘れない。
彼がくれた時間も、言葉も、温もりも。
すべてがかけがえのない宝物になるのだと、強く思った。
ーおまけー【忘れられない一枚 その後】
🐑
さて、もらった絵はどこに飾ろうかな~
スケッチブックから外して渡された絵を、大事そうに抱えたまま、僕は部屋の真ん中で立ち尽くしていた。
🎸さんはソファに座って腕を組み、少し照れたように僕を見上げていた。
改めて絵を見つめると、胸の奥がじんわり温かくなる。
だけど同時に、こんなに大切なものをどこに置いたらいいのか、決められないでいた。
🐑
ベッド上の天井とかどう?
🎸
いや、それだと寝る前に毎日見られるだろ?……俺、恥ずかしいんだけど
🐑
じゃあ、机の上?
🎸
それだとゲームするたびに目が合う……集中できないっ
提案するものが次々と却下され、思わず笑ってしまう。
🐑
じゃあいっそ、リビングに飾る?
🎸
やめろ!お客さん来たらバレるだろ!
真っ赤になった彼の顔を見て、堪えきれずに声を上げて笑った。その笑い声に釣られるように、🎸さんも少しだけ苦笑していた。

しばらく考えてから、彼はふと真剣な顔になり、絵を指差した。
🎸
…俺はさ、ひろくんの部屋に飾ってほしい
🐑
え?
少し照れたように視線を落としながら、彼は続ける。
🎸
俺が描いたけど……これは、ひろくんのための一枚だから。
だから一番、君が安心できる場所に置いてほしい。そうすれば……俺も嬉しい
その言葉に胸が熱くなる。
🐑
……わかった。ベッドの横に置くね。寝る前に見て、安心できるように
そう答えると、彼はほっとしたように笑った。
🎸
……まあ、ひろくんが眠るときも俺がそばにいるみたいだしいいかもね…笑
雨音の静かな部屋に、その一言が溶けていく。
抱えた絵の温もりが、彼の想いそのもののように感じられて、胸がいっぱいになった。

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