心配そうな声が聞こえる。
場の空気が変わってしまって、他のみんなも僕の周りによって来る。
今、僕のそばにいてくれるのは、
僕とちゃんと向き合ってくれた人。
ちゃんと叱ってくれて、
いつだって、
見捨てずにいてくれた人。
涙ながらに言うと、しんみりとした空気が流れた。
ーだからありがとう
そんな気持ちを伝えると、全員がこそばゆいような、そんな表情になった。
だって、あの日のことは、もうみんな忘れたかったから。
僕ももう、終わりにしよう。
あの日つけてしまった傷は、癒えないかもしれない。
自分についてしまった傷も、きっと、消えないかもしれない。
それでもきっと、この傷はいつか役に立つはずやから。
きっといつか、この7人なら笑い話に変えられるはずやから。
そう言うと、しげは柔らかく笑った。
そう言って、照れくさそうに、自慢の笑顔を見せる。
ああ、もう何度、しげに泣かされたんやろう。
今日もまた、
「照史また泣いとる」
「ほんま照史君泣き虫やなぁ」
なんてみんなの声がする。
ここに僕がいれるのは、
間違いなく、みんなのおかげ。
こんな僕やけど、これからも、よろしくな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。