「どうしても渡してほしいって頼まれたの」
「誰に...ですか?」
私の言葉に篠原さんは静かに首を横に振った。
「ごめんね...それは言えないの。そう約束したの……読むか読まないかは優花ちゃんが決めていいの。でも、もしその手紙を読んでなにか思ったら...お願いね」
篠原さんは静かそう告げて
「また来るわね」
と荷物を持って帰って行った。
私の手には篠原さんが置いていった真っ白な封筒が握られている。
「ねえ、お母さん?これ……読んだ方がいいと思う?」
カップを片付けるお母さんの背中にそう尋ねると、
「柚さんも言ってたでしょ?読むか読まないかは優花は決めなさい」
そう言ってお母さんはキッチンに行ってしまった。
私はその封筒を片手に部屋に戻った。
制服も着替えずにそのままベッドに倒れ込む。
特に何をする訳でもなくただ時間が過ぎるのを感じていた。
『 もしその手紙を読んでなにか思ったら...お願いね』
さっきの篠原さんの言葉が頭の中をよぎった。
『 お願い』
それがどういう意味なのかわからない。
……でも、この手紙を読めばすべてがわかる気がする。
ただ、それだけは何故かはっきりと分かっていた。
わからない、
怖い、
分かりたくない
知りたい、
知らなくちゃいけない
その言葉が浮かんだ時、わたしの手は自然と手紙の封を切っていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!