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第3話

「舞踏会で踊りましょう」

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「聞こえるか小隊長! すぐさま陣形を立て直せ、生きている者は全員自分の命と銃火器を死守しろ、死んでも死ぬなよ!」




 少将は銃火が閃ひらめく戦場の中で叫んだ。何人かの「サーイエッサー!」という叫び声が聞こえてきたが、途中で途切れた声もあった。誰かの悲鳴が聞こえた。苦悶の呻き声が聞こえた。断末魔が聞こえた。


 砂の味と血の味が混ざる。それを吐き捨てながら、少将は閃光手榴弾のピンを歯で取り、敵の方へと投げた。銃火が止んだ一秒後にそれが爆発し、その合図と共に何人かが少将と共に戦場のど真ん中に踊り出る。

 一発一発を全て敵の致命傷となる部分に当てる。およそニ十発撃った中で一発も敵の体から外さなかったのは、彼の天才的技量と血汗が滲む努力の証だ。


 敵が呻きながら地面に崩れ落ちてゆく。十秒後には、その戦場に立っているのは少将と三人の部下だけであった。少将は左手から血を流しているが、その三人も似たり寄ったりで荒い息を繰り返している。



 何かの違和感があった。


 それは一人の人物がそこにいないことだった。







「……大佐?」







 この隊唯一の女性である大佐がいなかった。



 ひゅ、と自分の喉が鳴ったのが聞こえた。大佐はこの隊で少将の二番目に強い。そして今までの訓練でも、きちんと上官の命令には従う優等生だ(たまにドジをやらかして怒鳴られているが)。この場に今すぐ出てこないとは、どうにも、違和感があって。

 耳鳴りがした。




「……しょ、しょぅ」




 しかし、その蚊の鳴くような声を少将の耳が聞き取れたのは、いわゆる奇跡というやつなのかもしれない。


 「──!」と目を瞠った少将は、すぐさまその声がした方に駆け寄って行った。ひどく心臓が早鐘を打った。全てを無視した粉塵の中を駆け抜け、そして、倒れている女性を見つけた。体つきはぱっと見細めで低身長の男と変わりないが、少将にはすぐに分かった。大佐だった。




 大佐の腹から、赤黒い血が流れだしていた。





「た──大佐ッ!!」




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