初夏の日差しが照りつける学校の中庭。
そこにさっちょんを呼び出した。
さっちょんの表情は強張っていて、目も合わせてくれない。
思わず泣きそうになって唇を噛み締め、握った手には汗が滲む。
意を決しすぅっと大きく息を吸い込んだ。
突然さっちょんは頭を下げた。
吸いこんだ息は行き場をなくし、ひゅうっと鼻から抜ける。
正直、スケベがバレてないことにホッとした。
でも目の前で真剣に謝ってくれているさっちょんに
胸がツキンと痛む。
脳内でスケベ心たちが緊急会議を始める。
小学生の頃の“すけべぇ”事件が脳内会議室のスクリーンに写しだされる。
教室中が敵に回った忌まわしい記憶。
脳内会議に夢中な私はすっかりさっちょんを
置き去りにしてしまっていた。
目を潤ませ、さっちょんは立ち去ろうと背を向けた。
その背はいつもの強気ギャルとは程遠い。
そして徐々に遠ざかっていくさっちょんの背。
そうだ。
言わなきゃ。
ちゃんと言わなきゃ!!
その声は中庭にこだました。
中庭にいる生徒達が何事だと一斉にこちらを見る。
振り返ったさっちょんは慌てて私の手を取り、女子トイレへと駆け込んだ。
そしてなぜかプルプルと震えだし、吹き出して笑う。
感極まってさっちょんの胸に飛び込んだらキモいって引き剥がされた……。
あれ、話が違う。
そう言って笑うさっちょん。
私たちを隔てる壁は、もうどこにもなかった。
今後は、隠し事ナシを約束して私はさっちょんに全てをさらけ出した。
小学生の頃のトラウマのこと、
ヒカル会長とのこと、
遊佐くんのカラダがとんでもなくスケベなこと。
話を聞くさっちょんの表情はコロコロ変わって面白かった。
今日イチのびっくり顔、いただきました。
スケベ心と恋心を並べて考えるとはさすが!
さっちょんは違いの分かる女だ。
なら私のこの気持ちは……。
急なさっちょんの問いに、答えられなかった。
小学生の頃、好きだったりっくんへの気持ちはただのスケベ心だったしーー。
“スケベ心”と“恋心”
一体何が違うんだろう……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。