<胡蝶side>
あれから、どこかの家から籠と竹を買い、炭治郎くんは禰豆子さんを入れるための籠を作った。
それにしても、冨岡さんがあんな顔できるなんて知らなかった、、、
というのは置いておいて、炭治郎くんは夜になっても狭霧山へ行くために行動しようとしている。
炭治郎くん本人は鬼に襲われていないから、夜に行動することの危険性を理解していないのだろうか。
危ないからどこかで一夜を過ごせ、と言ってあげたいが、生憎私達にはそれができない。
私達は大人しく、禰豆子さんと一緒に山に入っていく炭治郎くんを見送った。
山に入ってから少し歩いて、炭治郎くんは鼻をすんすんさせてハッと目を見張った。
行ってみよう、と禰豆子さんを引っ張って、2人で近くにあったお堂の敷地内に駆け込む。
そして、大丈夫ですか!?、とお堂の襖を開いて中に視線を向けた。
そして、、、炭治郎くんはヒュッと息を呑む。
中には、たくさんの人の死体と、それを喰らう鬼がいたからだった。
鬼は炭治郎くんと禰豆子さんを見て人間だと判断すると、炭治郎くんに襲いかかった。
少し離れたところに押し倒された炭治郎くんは、持っていた斧で鬼の首を浅く斬る。
だが、その血はすぐに止まり、みるみると治っていく。
日輪刀ではないから、ダメージも少ないようだ。
一方禰豆子さんは、たくさんの人の死体を見て涎をボトボトと垂らし、息を荒らげていた。
まだ鬼になって間もない禰豆子さんの身体はちゃんと『鬼』で、やはりこういうのを見ると誘惑されてしまうのだろう。
だが、鬼に襲われている炭治郎くんの呻き声を聞いてハッとすると、炭治郎くんに駆け寄る。
そして、、、
バコッ!、と良い音を立てて、炭治郎くんを押し倒すようにして襲っていた鬼の頭を蹴り飛ばした。
炭治郎くんが真っ青な顔をして倒れてきた鬼の身体を避け、禰豆子さんを見上げる。
妹が突然人のような見た目の生き物を殺してしまったのだから、そりゃあ怯えるだろう。
だが、相手は鬼だ。
これくらいで死にはしない。
頭の側頭部から腕を生やし、身体の方も動かして、それぞれに対応できるようにする。
身体の方は禰豆子さんを、頭の方は炭治郎くんの方を襲えるようにしたのだろう。
禰豆子さんは鬼になって日も浅く、人も食べていないために、まだ弱い。
すぐに山の奥へと追い詰められて行った。
炭治郎くんも禰豆子さんを追いかけようとするけれど、頭の方に阻まれて助けに行けない。
振るった斧の刃に鬼は噛みつき、髪を絡ませてきて取れないようにする。
そんな鬼に腹が立ったのか、炭治郎くんは顔を歪めたかと思うと、思いっきり頭突きをした。
頭蓋骨が砕けたのではないかと心配になりそうなほどの音が聞こえた。
思わず突っ込み、私は炭治郎くんのその後を見る。
頭突きを食らって気を失った鬼がついている斧を投げて木に刺し、炭治郎くんは禰豆子さんを追いかけた。
私達もそれを追いかける。
炭治郎くんは、禰豆子さんを甚振っている鬼の身体に突進し、そのまま、、、鬼諸共崖から落ちた。
甘露寺さんが声を上げた瞬間、禰豆子さんが動いた。
崖の上から手を伸ばして炭治郎くんの襟を掴み、そのまま引っ張りあげる。
気をつけろ、と言うような声を出して、禰豆子さんは炭治郎くんに顔を向ける。
炭治郎くんはそれに頷いて、2人であの鬼の頭のところに戻って行った。
鬼はまだ気を失っており、炭治郎くんは懐から出した小刀を構えた。
しかし、止めを刺すのに抵抗があるのか、軽い過呼吸を起こして視線を彷徨わせる。
その次の瞬間、炭治郎くんの肩に誰かの手が置かれた。
炭治郎くんが慌てて振り返ると、そこには、天狗のお面を被った老爺がいた。
テキトーな返事をして、冨岡さんは視線を炭治郎くんに戻す。
自分の弟弟子がこの後、どういう判断をするのか気になっているのだろう。
少し嗄れた声が響き、炭治郎くんが驚くような声がその後に続いて響いた。
ヒントを与えたくせに突き放すような言い方をする鱗滝さんに戸惑ったのか、炭治郎くんは鬼に視線を戻す。
そして、小刀をしまって少し大きめの石を持ち、鬼の前に立った。
だが、やはり躊躇ってしまうのか、迷うように視線を彷徨わせている。
そうこうしているうちに、鬼が目を覚ましてしまった。
そして、こっちから行けないんだからこっちに来い、なんてツッコミどころ満載な発言をする。
それを見ている鱗滝さんは、気難しそうに腕を組んでいた。
ふいに、さあっと日がその場に差した。
その瞬間、鬼は汚い悲鳴を上げて塵と化す。
それを呆然と見ていた炭治郎くんは、ゴトリと石を落として、口元を覆った。
真っ青な顔をしている。
慌てて禰豆子さんを探し、お堂の中に入って隠れているのを確認して、炭治郎くんはまた外に出てきた。
鱗滝さんはその間に、殺された人たちの供養をしていた。
その突然の問いかけに、炭治郎くんは少しだけ戸惑うように言葉を止める。
その次の瞬間にはもう、炭治郎くんは鱗滝さんに頬を叩かれていた。
パアン、という音が響く。
鱗滝さんのひとつひとつの言葉を噛み締めるように聞き、炭治郎くんが頷く。
それを見て、鱗滝さんも「良いだろう」と言う。
そう言って駆け出した鱗滝さんの後を、炭治郎くんは禰豆子さんを背負って慌てて追いかけた。
視界が白くならないことに気がついた私は、皆さんにそう声をかける。
皆さんは、それに各々頷いてくれた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。