まあ、そんなこんなでコウタはノスディシアに多大な勘違いをされることになったのだが(フィールにも共有されるものとする)、そんなことは本人は露知らず呑気に白騎士寮の中を歩いていた。
何処かに行く用事がある訳じゃない。なんなら、建物の地図が無いから当てずっぽうで歩いているだけ。ただ、コウタは子供になり、童心にも帰ってしまったのかとても楽しそうである。
コウタside
コウタ『しかし、どこもかしこも広いな…。大所帯だけはあるよな』
俺は開けた扉からそっと中を覗いた。椅子と机が沢山ある。会議室みたいだな。
さっき見ていたのが図書室、その前が調理場。そのどちらも普通サイズの2倍くらいはあった。つまりデカイ。
というか、俺何やったらいいんだろ。異世界にやって来て、ある意味新生活が始まって…でも子供の姿だから仕事が出来ないし役に立たない。
ここに居る意味とは。
リシュール王子は俺には利用価値があるって言って里親を見つけようとしているんだけど、それも見つかるのかは未定。見つかるだろうけど。あの人王子だし。
コウタ『あ、制御する練習しとけって言われたっけ。何処でやったらいいんだろ』
何しろ地図が無い。当てずっぽうで来てしまったからなぁ……。引き返してけばいいよな、戻ろ。
ぱたむ、と会議室(仮)を閉めてくるりと後ろを向いた__
フィール「コウタ」
コウタ『ぎゃーー!!??』
ら、変なポーズで固まったフィールが俺の後ろにいた。肩に手を置こうとしたらしい。
フィール「そこまで驚かせるつもりは無かったのだが…」
コウタ『音もなく!!後ろに!!居るな!!!物音をだせ!!』
フィール「騎士に物音を出すなとは面白いジョークを言うな、コウタ。異世界ならではか?」
コウタ『んっっなわけないでしょ!?』
コテリと首をかしげ本当に思ってそうに言うもんだからやっぱコイツ天然だよなぁ……。
フィール「それより、呼びに行こうとしたら部屋に居ないから驚いたぞ。探検していたのか?」
コウタ『嗚呼うん。情報は多い方がいいかなって』
用心深いのは日本人の性格だと俺は思ってる。だって日本人ってちゃんと玄関の鍵かけるじゃん?でも外国には掛けない国があるらしいよ。
大学の心理学教授が言ってた。「心のゆとりの有り無しが原因ですかねぇ……」って。ゆとりがない方が日本人だってさ。
じゃあ俺はゆとりが無いってコト!??合ってるけど!会社じゃタスクに追われる日々、帰ったらカップラーメンの夕飯。偶に送られる母親の味が霧散しそうな俺を繋ぎ止めていた……。
あ、母さんと父さんなにやってんだろ。俺の行方不明届けってだされたのかな。あの人たちポヤポヤしてるから不安なんだけど。「コーちゃんなら大丈夫よぉ〜」とかで茶ァシバいてそう。
フィール「異世界から来て情報が少ないのはわかるが、一つ声かけしてから動いてくれ。ノアがキレながら私の部屋に入って来たぞ」
ノアさんなにやってんのぉ。え、俺をノアさんが探してたってこと?なんかしたっけ。煽ったわ。
コウタ『ごめんフィール。次からは多分そうするわ。ノアさんにもごめんって言っといて』
フィール「その必要は無い。この後どっちみち訓練所でノアに会うからな。対面で言えるぞ」
ノアさんが面倒臭いからフィールに頼んだのに対面で言えとは何事。
in訓練所
ノスディシア「やぁっと来たなぁガキ♡」
コウタ『うっっわ(嫌悪の表情)』
何も仁王立ちで迎えることないでしょ。周りの騎士さんドン引きだよ。
ノスディシア「なぁにぃその表情。オレになんか文句あるぅ?」
コウタ『無いです』
青筋が立った笑顔でこちらを向くので従った方が良いと俺の会社で身につけた勘が言っている。
フィール「ノア、早速だが始めてくれ」
ノスディシア「お前に言われなくともやるんだけど」
フィール「それは済まないな」
ノスディシア「…………ッチ」
わー、険悪ー。一方だけだけど。
ノスディシア「さぁて、ガキィ。お前にはこれからそのデカすぎる共鳴の反応を抑える……
制御訓練を受けてもらう」
コウタ『え、今から?』
食べて1時間も経ってないのに運動しなければいけないことに疑問をもつコウタ。オムレツ消化できるかなチャレンジが始まった。
次回『特異性』












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。