ジョナサンside
朝、ぼんやりと目覚めた時だった。嗅いだことのないような物凄く良い匂いがしてきたので、普段とはイレギュラーな出来事に驚いた僕はベッドから跳ね起きた。
適当に髪の毛だけ整えてから階段を駆け降りてリビングまで行ってみれば、あなたが朝食を作っていた。見たことのない料理だった。ギリシャの料理かな…?
あなたによれば、やはり故郷ギリシャの料理だった。食べてみれば、これがもう絶品だった。ギリシャにはこんな美味しいものがあるんだなぁ…世界って広い。
ジョセフ達もすぐにやって来て、やはり僕と同じくあなたの料理を見て驚いているようだった。そして食べた後には僕と同じような反応をした。流石、分かってるね。
しかし、承太郎が放った「良い嫁になる」発言に僕は一瞬固まった。あなたが……将来誰かのお嫁さんになって、これを誰かのために作るのか……???
凄く嫌だった。あなたは……あなたは僕と結婚して僕のためにその料理を作ってくれるんじゃないのか…?どこの誰かも分からない男のためにそれを作るのかいあなた?
重い気分になったが、ジョセフ達が学校に行ってから、あなたとお皿を洗っているうち少しは和らいでいった。
あなたの手にも怪我一つ無かったし安心した。もしも怪我をしているようであれば、今後キッチンに立たせるわけにはいかない。いや、正直今すぐにでもキッチンから離したい所だけど。
お皿洗いを終えた後は、僕も大学に行くまで時間があったので、あなたとお茶を飲みながらゆったりと過ごした。
折角だから、あなたの恋愛観について聞いてみようじゃあないか。今後の参考にするために。ジョセフ達に教えるつもりは……今のところない。
卑怯かもしれないけど、僕はあなたを独占したい気持ちの方が上なんだ、ごめんね。
微々たる罪悪感はあったが、時間も時間なので取り敢えず質問していった。
自分が優しいとは思わない。自分が暖かいとは思わない。だけど……英語なら話せる。英語くらいなら簡単に話すことができる!
僕があなたの思う理想の男性の型に合うのかどうかは誰にも分からない。でも、兎に角合わせに行くのみだ。
ジョセフ達には内緒で、ちょっとずつそこに合わせて行き、好感度を上げていこう。そしていつかはあなたを永遠に僕のものに___________
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。