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第5話

2 . 杯 楓 編
33
2023/10/12 11:29
大きな風の音で、ふうはゆっくりと顔を上げた。
 楓 .
 楓 .
、、、うるさいな。
強い冬風が吹く夜に、さかずきふうは1人ぽつりとつぶやく。
楓は、食事や睡眠を取らない不思議な体質だが、睡眠を取らないからこそ困ることもある。
その良い例が、現在深夜の3時の暇な時間なのだ。
 楓 .
 楓 .
(テレビはロクな番組が無いし、、、、)
今流れてる番組と言えば、ちょっと卑猥な番組やグロいアニメぐらいで、楓の心を満たすものなど何ひとつない。
ぽいっとリモコンを床に放りなげると、楓は身体ゆっくり横にさせた。
 楓 .
 楓 .
(、、、気持ち悪い。)
ああ、まただと、心でそう呟いた。
美しい景色を汚く感じ、優しい人間が酷く恐ろしい人間に感じてしまうようになったのだ。
楓はそんな自分がとても醜く思えて、自然と自分が何なのかわからなくなってしまった。
 楓 .
 楓 .
こんな僕なんか、大嫌いだ、、、
服の袖で、目元をぐっと覆い隠す。
その瞬間、しばら鳴っていなかったチャイムの音が、部屋中に響き渡った。
『杯さん、いるかな?』
1年ぶりの綺麗な声が、インターホンの画面から聞こえる。
 楓 .
 楓 .
、、、
楓は無言で、玄関の鍵をかちゃりと開けた。
すると、鍵が開いたことに気づいた“彼女”はゆっくりとドアノブを回した。
 らゐむ .
 らゐむ .
ありがとう、杯さん。
 楓 .
 楓 .
、、、キミって本当に、人の家に入るのが好きだよね。
楓が少し鋭い言葉を使うと、“彼女”はただ微笑むだけだった。
楓が彼女に出会ったのは、酷く寒い日のことだった。
 らゐむ .
 らゐむ .
こんにちは、今日は寒いですね。
じっと水が凍った川を眺めていると、彼女はそう言って楓に話しかけてきた。
だがその時の楓は酷くむしゃくしゃとしていて、らゐむの声などに一切反応しない。
それでも彼女は気にせず、淡々と話してゆく。
 らゐむ .
 らゐむ .
あれ、この川凍っちゃったんですね。
 らゐむ .
 らゐむ .
わたし、昔からここの魚に餌をやっていたんですよ。
 らゐむ .
 らゐむ .
ぱくぱく口を動かす姿が、ちょっぴりわたしに似ている気がして、、、
あ、話しすぎちゃったと、彼女はにへらと間抜けな笑みを浮かべる。
楓はその姿を見ると、うざったいような嬉しいような何とも言えない感情を感じた。
 楓 .
 楓 .
、、、それは無様だね。
ぽつり、と楓は刺々しい言葉をらゐむに刺した。
だがその言葉に、彼女は何の反応も見せなかった。
それどころか、楓をじっと見つめると誰に対してかもわからない言葉をただこぼした。
 らゐむ .
 らゐむ .
、、、ええ、とっても無様ですね。
その時の彼女は、少し濁った、でも輝かしい瞳でずっと凍った川を眺めていた。
その姿は雪の妖精のような、冷たい悪魔のような、哀れな人間のような、そんな姿であった。
 永遠 .
 永遠 .
どうも温めた空気を壊すプロ、永遠とわでぇす☆((
 永遠 .
 永遠 .
今回は杯楓くん編でしたね!!
 永遠 .
 永遠 .
感情と痛覚の無い楓くんの哀れさを練り込んで焼いたところ、なんかトゲトゲになっちゃいました、、、
 永遠 .
 永遠 .
ちょっぴり伏線(?)も入れたので良ければ読み取って下さい〜!
 永遠 .
 永遠 .
ばいばい!!
桜瀬おうせ 舞花まいか

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