……なんだここ……
建物の壁や屋根には苔や草が生え……
人影もない……
静かな村をゆっくりと歩いていくと、元々家だったところにたどり着いた。
横には、2つのお墓があった。
結構乱雑に作られたお墓だった……
あんなに酷いことを沢山していたのに……
お墓までたててくれたんだ……
もう誰もいないはずの周りの家々に向かって
感謝を告げた。
その後、ほぼ自然の一部になったかのような家の中に入る。
そこには、妹とよく遊んだお手玉があった。
懐かしい記憶が蘇る。
それと同時に寂しさも増してくる。
寂しさに溺れない内に、お墓にダイモンジソウを共えて村を出た。
来世では、自分らしく自由に生きてほしい……
幸せに生きてほしい……
明るい口調で己を鼓舞し、街に降りていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!