樹くんと電話してから2週間が経過していた
夜、職場の先輩に誘われて食事をした
あの日たまたまお誘いのメッセージが届き、私はその誘いを断らなかったのだ
『俺、あなたちゃんのこと気になってるんだ』
仕事もできるし、顔だって整っている
優しいし私のことを好きだと言ってくれる
断る理由を見つける方が大変な気がする
お酒も飲んでいてぐるぐる考えながら家に着くとあかりがついていた
「慎ちゃん…?」
慎『おかえり』
合鍵を渡してあるのは彼だけだ
久々に見た彼の顔
嬉しいという気持ちで見られないのは彼に対する不安と罪悪感のせい
慎『あなた、この前は…ごめん』
「何のこと?」
慎『樹から聞い出ると思うけど、飲み会のこと黙っててごめん
スタッフの人だからもちろんそういう関係とかではないよ?
でも不安にさせちゃったよね』
私の手を握りながら話してくれる
「慎ちゃん」
慎『ん?』
少し不安そうにこちらをまっすぐみる瞳も
優しい声も
男の人らしい大きな温かい手も
本当に好きなのに。
泣きそうになる私を優しく抱きしめる彼
慎『俺はあなたが好きだよ
あなただけしか見えないの、だからどこにもいくな』
こんなにもあったかくなるのは彼だから。
「私も好きだよ」
彼を強く抱きしめ返した
Fin
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。