煌めく海。はためくカモメ。
流れゆく潮風はどこか冒険を運んできそうな匂いだった。
だだっ広い海の中を迷いなく突き進むように1隻のライオンのような船頭をした船が浮かんでいる。
帆には麦わら帽子を被った髑髏が描かれていた。
その船内をゴムのように伸びた腕で軽々移動する麦わら帽子をがぶった男。
彼こそがこの船の船長であり、海賊王を夢見る、"モンキー・D・ルフィ"だ。
ウソップと呼ばれた鼻の長い男。
彼はこの船の狙撃手。
チョッパーと呼ばれた帽子を被ったトナカイはこの船の船医をつとめる。
3人がはしゃいでいる様子を見て呆れながらも不安がるのは凄腕の航海士、ナミ。
さっきのナミとは反対に笑顔をこぼすロビンは世界がその存在を追う考古学者だ。
柱によりかかり、さっきまで昼寝をしていたであろう緑ベースの男はかつて海賊刈りの異名で恐れられた剣士、ゾロ。
クソコックと呼ばれたこの男、この世の女を全て愛する敏腕コック、サンジ。
パンツ1枚と裸にシャツ1枚しか着ていない変態チックな男。よーく見ると彼は鉄を体にまとったサイボーグ。この船の船大工、フランキー。
紳士的なガイコツ、ブルックは一見誰しも震え上がるような見た目だが、みんなを笑顔にさせる音楽家である。
船内で1番クルー歴が短いが心強い操舵手、魚人のジンベエは豪快に笑った。
"麦わらの一味"
今、全世界を騒がす名の通る海賊だ。
数々の恐れられていた敏腕海賊を倒し、ある国の中では密かにヒーローとでも称えられる。
いい意味でも、悪い意味でもこれまでとは違った海賊。
そんな最強と謳われるのにさほど時間はかかりそうにない海賊団に、少しばかり冒険を揺るがす"何か"が起きようとしていた。
皆が耳を澄ます。
キョロキョロと当たりを見回す。
海。
船内。
上…
びよーーーん
ルフィが下から手を伸ばし、上から落ちてきた少女の腰に巻き付ける。
グイッ!!
ルフィは腕を引いた。
少女は死を覚悟して目をつぶったようだが恐る恐る目を開いた。
そして顔をぺたぺたと触る。
彼女の耳の月をモチーフにしたと思われるピアスが揺れる。
その少女は一般的な男性なら誰もが見惚れる程の容姿をしていた。
肩までのふわふわした栗色の髪に、瞳と同じ色だと思われる水色メッシュの触覚が映える。
切りそろえられた前髪から覗く瞳はまるで宝石のように美しく、全体的に見ても整った顔立ちをしている。
白いフリルのついたタンキニに黒いショートパンツと、大胆に腹部と太ももが晒された格好は彼女の引き締まったからだを強調させていた。
女に目がないサンジが少女に手を貸そうとする。
当たりを見回していた少女はルフィに目を止めると一目散に近づいた。
当たり前だがサンジの手は行きどころを失った。
そんな2人の会話を他所に少女とルフィは対面する。
少女は左手を軽く握り少し下を向く。
ルフィの幼い頃の記憶の中で同じポーズをした少女と重なった。
ルフィが目を見開く。
あなたの下の名前、と呼ばれた少女はルフィの中の記憶と変わらないニカッとした笑顔で笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。