気付けば、荷物と一緒に元の部屋にいた。
またここか…
白いワンピースに白い短パン、いつも姿だ。
脱走…私には無理だよ……
私はそう諦め、元の生活へと戻った…
9年後…
私はもう25歳。
高校を卒業した私、大学に行くことなくあの
部屋で暮らし続けていた。外に行くことが
無くなったから部屋から出ることも無くなり
夜は暴力を受け、耐え続ける。
そんな日常を送っていた。
そういえば、もう天才ゲームから9年だっけ…
みんな、元気にしているかな…
スマホのカレンダーを見てそう思う。
そろそろ起きないと朝ご飯の時間…
今は6:53。朝ご飯を部屋に持ってきてくれる
のは7:00だ。
私は渋々布団から出ると、机を部屋の真ん中
に引っ張り出す。
ここの食事は無駄に栄養バランスがいい。
朝からコーヒーとケーキっていうのは、あの
ゲームの時だけだ。
粗末な物でも食べさせたらいいのに…
いつもの見張りの人が入って来て、机の上に
お盆を置く。そこに乗っていたのは…
…コーヒーとケーキ。
そう言われ、ぱっと見張りの人の顔を見る。
いつも通りのニット帽にマスクだ。
ニット帽を取り、マスクを取った。
ジンはそう言うと、巨大なペンチで鎖の1つ
を歪ませ、鎖を切り離してくれた。
そう言い、小さめの鞄を私に渡してくる。
イマイチ状況は呑み込めないが、ここで引き
返すことも難しいので私は鞄を受け取ると、
裸足で部屋を出て、外へ。
そして、何処かへ走り出したのだった…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。