第21話

過去
100
2024/06/23 06:06
今回の話は前回と同様、地震、津波の表現を含みます。気分を害された方は直ちに閲覧をおやめください。
夢主(幼少期)
夢主(幼少期)
おにーちゃん!あん⚪︎んまんぐみかって!
はいはい、お前ほんとこれ好きだよな
夢主(幼少期)
夢主(幼少期)
おいしいんだもん!


私にはお兄ちゃんがいた。
お兄ちゃんと私は10歳差、毎日お金稼ぎに行ってたりした。
私が小さい時にはよく買い物に行ったり、お兄ちゃんが休みの日は近所の公園に遊びに行ったりした。
でも小学生になっても中学生になってもいつも帰りは迎えに来てくれた。
歳が離れていて友達から馬鹿にされた時、お兄ちゃんが怒って学校に襲撃に来た時もあった。
私の両親の実家は石川県の能登半島にあり、お盆休みと年末年始は毎年そこに泊まっていた。
もちろん今年もそこに行って、年を越した。
お兄ちゃんと食べるご飯が1番美味しかった。
笑い合い、泣き合い、怒り合ったり。
そんな日常が楽しかった。面白かった。










私は知らなかった。これがお兄ちゃんと越す最後の晩ということを。



夢主(中学生)
夢主(中学生)
お兄ちゃん、今日のご飯何ー?
餅って母さん言ってたぞ
夢主(中学生)
夢主(中学生)
いぃぃやったー!おにいちゃん餅で何好き?
特に俺餅好きじゃねえ
夢主(中学生)
夢主(中学生)
えー、美味しいのに‥‥‥‥
その時だった。



「ブーブーブーブー、地震です、地震です。」
夢主(中学生)
夢主(中学生)
いやああああああ!
落ち着け、あなた怖くねえから
ガタガタガタガタガタガタ‥‥
夢主(中学生)
夢主(中学生)
お兄ちゃん、揺れてる!隠れないと!
わかったわかった、机の下いこうな


夢主(中学生)
夢主(中学生)
収まった‥良かったぁ
一応テレビでもつけっか



は?
夢主(中学生)
夢主(中学生)
お兄ちゃんどうしたの?
あなた、津波が来ちまった。
夢主(中学生)
夢主(中学生)
嘘でしょ!?逃げないと!
早く行くぞ!






夢主(中学生)
夢主(中学生)
華ーーーー!こっち!!!!!!
真新井華
真新井華
あなた、大丈夫だった!?
夢主(中学生)
夢主(中学生)
うん、大丈夫。、、、お兄ちゃん?
この調子だと、もう全員助からねえ
俺は海岸付近にいるやつを誘導してくる。あなた、華、お前らはここで母さんと父さんを待ってろ
夢主(中学生)
夢主(中学生)
ちょっと待ってよ!私も行く!
だめだあなた。危険だ。
夢主(中学生)
夢主(中学生)
で、でも!
俺は必ず戻ってくる。それまで待ってろ。約束だ。
夢主(中学生)
夢主(中学生)
う、うん。約束だよ











真矢
真矢
あなた!大丈夫だった!?
夢主(中学生)
夢主(中学生)
お母さん!うん!
真矢
真矢
お兄ちゃんは!?
夢主(中学生)
夢主(中学生)
海岸付近の人を誘導してくるって、行っちゃった‥‥
真矢
真矢
嘘でしょ、!?あとなんか言ってなかった!?
真新井華
真新井華
はい、あなたと私でここでお母さんとお父さん待ってろって言われました!
真矢
真矢
華ちゃんありがとね!ったくもうあの子ったら無茶して!
夢主(中学生)
夢主(中学生)
‥‥‥‥お兄ちゃん、戻ってきてよ‥








だが、数時間経ってもお兄ちゃんは帰ってこなかった。

翌日、出動した自衛隊によってわたし達は、、
お兄ちゃんの死体が見つかった事が伝えられた。


言葉が出なかった。言い返せなかった。信じられなかった。
あんなに強かったお兄ちゃんが、死んだ?ありえない。
死ぬはずがない。何で?

私は泣き叫んだ。泣き叫ぶしかできなかった。空や、海を見つめたくなかった。


お兄ちゃんの代わりに私が死ねば良かったんじゃないかと思った。






令和6年1月1日、後に能登半島地震と呼ばれるその地震で、私は兄を失った。

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