「はぁ……身体バキバキ」
そう言って、伸びをした。
「やっと自由になった。……さすがに身体がなまったな」
まるですべてを吐き出すように、息を吐く。斜め後方から私はユウを眺めた。
少し伸びた髪の隙間から見える彼の表情。わずかに頬を緩ませたその顔は、疲労の影すらも見えない。
ユウ……あなたはーー。
息を飲む。私は、ただユウのほうを見つめた。
「さぁて……」
彼の動きが止まった。そして、桜子のほうを振り返った。
「桜子ちゃん。よくも、まぁ、ここまでやってくれたよね」
そう語りかけたユウの顔は笑顔。けれど、目は笑っていない。
「っ……」
桜子の肩が揺れた。依然として、ユウはニッコリと笑っている。
「言いたいこと、山ほどあるんだよね」
「……ユ、ユウ」
怯えた表情を浮かべる桜子。ユウは彼女のほうへ歩み寄った。
「ま、まって」
「いいや、待たない」
そして首を掴むと、勢いよく壁に押しつけた。
「ぅ……ッ」
うめく桜子にユウが耳もとでささやく。
「まさか薬を打たれるとは思ってなかったな。正直油断してたよ。ていうかさ、僕がラリってる間、何回僕とヤッたの? 何回僕を凌辱したわけ?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。