第114話

分岐点⑧
3,615
2019/04/17 12:21


 ユウが私をジッと見つめた。真剣な眼差し。私は戸惑った。
「……ユウ?」
「軽い気持ちのまま、好きだ、なんて言葉。もう使いたくないんだ。だから、杏奈」
 ユウの紡ぐ言葉。
「あらためてちゃんと言いたかった」
「……え」
「僕と付き合ってくれないかな。結婚を前提として」
「……冗談?」
「本気」
「…………」
「杏奈?」
 視界の中にある景色が溺れていく。そして、溢れる私の目から大粒の涙。
 ユウから返事を求められた。そんな必要ないでしょ、と泣きながら言うと彼は笑った。
 好きだよ。杏奈。そう言って、また笑った。
 久しぶりに見たあなたの笑顔は、私を惑わせる。その顔は、やっぱり綺麗だった。

次は『ご褒美』

プリ小説オーディオドラマ