ユウが私をジッと見つめた。真剣な眼差し。私は戸惑った。
「……ユウ?」
「軽い気持ちのまま、好きだ、なんて言葉。もう使いたくないんだ。だから、杏奈」
ユウの紡ぐ言葉。
「あらためてちゃんと言いたかった」
「……え」
「僕と付き合ってくれないかな。結婚を前提として」
「……冗談?」
「本気」
「…………」
「杏奈?」
視界の中にある景色が溺れていく。そして、溢れる私の目から大粒の涙。
ユウから返事を求められた。そんな必要ないでしょ、と泣きながら言うと彼は笑った。
好きだよ。杏奈。そう言って、また笑った。
久しぶりに見たあなたの笑顔は、私を惑わせる。その顔は、やっぱり綺麗だった。
次は『ご褒美』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。