校舎内に入り,廊下を歩く。
すると,理事長室が見えてきた。
此処まで私を案内してくれたのにまた変な声で返答しちゃった……。
しかも重そうな扉を開けてくれたし……。
本当に優しそう………。
でも万が一がある!
油断禁物!!
扉の先にはクラシック調の部屋が広がっており,奥の席に1人の男性が座っていた。
お,男の人………。
でも大丈夫,理事長さんがこんなところで問題なんて起こすわけ無いし!!
うん!!
“編入試験を突破できる生徒”って……,別に珍しくないんじゃないのかな………。
まあ良いか,取り敢えず返事しないと……。
私はそう言われ,理事長室にあるソファへと腰を下ろした。
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私は数分だが,一通りの説明をされた。
裏って何だろう………。
後で東先輩が説明してくれるらしいけど,変な反応をしてしまわないか不安だっ……。
突然声色を変え,顔をしかめた理事長。
あ,謝らなきゃいけないことって何…?
まさか入学手続きが出来てなかったとか……!?
いや流石にそれは無いか……。
だ,だだ男子寮……!?
嘘でしょ………。
に,2回目ってこと……?
理事長先生,色々と大丈夫ですかそれ………。
言われている意味も状況も分かってるけど,衝撃の事実に言葉を失う。
確かに私こんなですけど……,一応これでも女なのですが……。
理事長の言葉に,流石にすぐ「はい」とは言えなかった。
い,一応って……,庇ってくれてるんだろうけど,貶されてる気もするんですが………。
れ,蓮……?
誰だろう………。
てゆうか,生徒会専用寮何てあるのっ……!
でも其処なら男の子もそこまで居ないよね……?
あれでも待って,先週もこのミスしたって……。
やっぱり……!
その子が居るなら,男子寮で生活しても良いかも。
でも出来れば隣にして貰いたい……。
女の子が隣なら安心だ……!
私はそう思い,OKの意を示した。
私はそう言って微笑みを返した。
席を立ち,理事長に頭を下げる。
そして東先輩に促されるまま,理事長室を出た。
東先輩と歩いている内に,とても大きな建物が見えてきた。
こ,此処が生徒会専用寮,かな……?
凄い豪華……,高級マンションみたい………。
やっぱり此処なんだ……。
私これから此処に住むんだよね?
間違い無い,よね?
センサーまで着いていると言うことに驚きつつも,東先輩に着いていく。
エレベーターに乗り,最上階へと上がっていく。
そして廊下の角を曲がり,手前から見て2番目の個室の前へと立つ。
そうして私は東先輩にお礼を言った。
すると東先輩は軽く会釈をし,後者の方へと歩いていった。
あ,そうだ,もう部屋に入らなきゃ。
そう思いカードキーを差し込もうとした時,1個奥の個室から人が出てきた。
出てきたのは,高身長の男の人。
赤みがかったブラウンの瞳に,漆黒の髪の毛。
髪を整えたりアクセサリーを身に付けたりしているわけでもないのに,それでも目の前の男の人は綺麗だった。
うわぁ……,東先輩とはまた違ったイケメンさんだ……。
って,そんなこと考えてる場合じゃない……!!
何か凄く睨まれてるっ…!!
それに殺気も感じるんですがっ……!!
こ,怖い……………!!
私が返事をすれば,眉間に皺を寄せ,不機嫌オーラ全開の様子を醸し出す男の人。
こ,怖すぎるよっ………!!
男の人が苦手な私にとって,今の時間は地獄かと本気で思う程だった。
あまりの怖さに自然と視線は下へ行く。
それをどう受け取ったのか,舌打ちをされ,男の人は口を開いた。
そう言えば,さっさと横を通りすぎていった。
こ,怖かっ,たぁっ………!
私は安心からか,その場にへたりと力無くしゃがみこんでしまった。
意外と平和に暮らせるかと思っていた数分前の呑気な自分を恨んだ。
私は一人,誰も居ない静かな廊下でそう声を上げた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。