第12話

嫌い
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2019/04/01 03:17
放課後。

私は教室で独り、窓から校庭を眺めていた。
栗原 瞳
つまらないなぁ...
何もすることがなくて、一緒にいてくれる人もいない。

《孤独》というものはこんな感じなんだな、と思った。
栗原 瞳
はぁ...帰るか....。
私はスクールバッグを手にして、教室の出口へと向かう。

















『帰っちゃうの?』




















─────────ドクン!





心臓が飛び跳ねる。







突然、目の前に人が現れたのだ。



私の、よく知っている人────────



















栗原 瞳
さ..く...ら......?
谷崎 桜
うん。桜だよ。
いつもの桜ならそう言って微笑むハズなのに、今の桜は無表情だった。
栗原 瞳
何か用?
私は平然を装う。
谷崎 桜
ううん。別に、何も。
谷崎 桜
教室に来たら瞳がいただけ。
栗原 瞳
...そう。
栗原 瞳
じゃあ私、帰るから。
私はそう言って、桜の横をスタスタと通り過ぎる。

だけど...
谷崎 桜
待って。
桜に腕を掴まれて、引き留められた。
栗原 瞳
....何?
少しだけ、顔が引きる。
谷崎 桜
瞳でしょ?

─────────ドクン!
栗原 瞳
な、何が...?
谷崎 桜
とぼけないでよ。
谷崎 桜
放火のことSNSにアップしたの、瞳なんでしょ?
栗原 瞳
は?そんなわけないじゃん。
私はいかにも嫌そうな顔をする。
谷崎 桜
親友の私には分かる。
親友、親友、親友...




────────パシッ


私は、桜が掴む腕を無理矢理離した。
栗原 瞳
はっ、親友?何言ってんの?
谷崎 桜
...え?
栗原 瞳
私の親友は今のあんたじゃない。
栗原 瞳
私はあんたが大嫌い。
私がきっぱりそう告げると、桜の顔が曇った。
谷崎 桜
で、でも!もし瞳が私を嫌いだとしても、SNSにアップするのは酷いよ!!
......は?
栗原 瞳
放火するのが悪いんじゃん。
谷崎 桜
ち、違っ!私は放火なんか...
栗原 瞳
してる人はだいたい、そうやって言い訳をする。
谷崎 桜
違う!違うの!だから私の話を...
栗原 瞳
嫌だ。名前を聞くだけで反吐が出るほど嫌いな人の話を、何で私が聞かなきゃならないの?
谷崎 桜
お願いだから!
ああ、鬱陶しい。
谷崎 桜
少しでも良いから話を...
栗原 瞳
うるさい!!
私が怒鳴ると、桜の肩がびくっと揺れる。
栗原 瞳
鬱陶しいんだよ!
栗原 瞳
だいたい、何で私を裏切ったわけ!?
栗原 瞳
私を裏切らなければこんなことにはならなかった!!
栗原 瞳
全部、あんたのせいなんだよ!
栗原 瞳
あんたなんか...あんたなんか.....




















『生まれて来なきゃ良かったんだ!!』





















私は、叫んだ。



それは、人間として言ってはならない酷い言葉だった。





何も考えずに怒鳴っていた私は、桜の気持ちなんて考えもしなかった。
谷崎 桜
っ...
桜は泣きだした。
谷崎 桜
瞳の馬鹿!私だって、瞳のことなんか大嫌いだ!!
桜はそう言い残して、教室を飛び出していった。























それは、私の中から全てがこぼれ落ちた瞬間だった。

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