第9話

亀裂
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2019/03/14 09:59
一緒に下校している時だった。
伏見 由希
ねぇ、もうやめよう?
それは、思いもしなかった。

伏見さんが道端で急に止まり、女王を落とすことをやめようと言った。
栗原 瞳
何で?
伏見 由希
だって、私たちが無理矢理学校生活をねじ曲げてる気がして...
....は?
栗原 瞳
ねじ曲げようって言ったのは伏見さんでしょ?
伏見 由希
そ、そうは言ってないよ!
栗原 瞳
遠回しに考えればそうだった。
伏見さんは黙る。

何も言い返せないのだろう。
栗原 瞳
言い出したのは伏見さん。
栗原 瞳
言い出しっぺがやめるとか無責任なこと言わないで。
伏見さんは、間を少し置いて話す。
伏見 由希
確かに、無責任だよ。私は。
伏見 由希
でもやっぱり、このままじゃ駄目な気がするんだ。
伏見 由希
それに...
伏見さんは少しためらいながら、私を見つめる。
伏見 由希
女王...いや、谷崎さんにも、何かしら理由があるかもしれないよ?







女王、谷崎......桜。



そう。私たちのクラスの女王は谷崎桜。





私が復讐しようとしている、谷崎桜。




谷崎桜は、私の親友の谷崎桜を殺した。






谷崎桜は、私の親友の谷崎桜を捨てた。

新しい、谷崎桜になった。

私をおいて。










栗原 瞳
理由?何それ。
栗原 瞳
理由があるからって、人を見下して、人をいじめて、自分中心に生きて良いわけ?
伏見 由希
そういうわけじゃ...
栗原 瞳
意味分かんないんだけど。
伏見さんが完全に黙る。
栗原 瞳
伏見さんは、私と仲間をやめたいみたいだね。
栗原 瞳
良いよ。やめてあげる。
栗原 瞳
さようなら。
私は伏見さんを置いて、歩き出した。








私と伏見さんの間に、亀裂が入る。



大きな、大きな、亀裂。






くっついてたわけじゃないのに、亀裂が入った。











仲間ごっこは、もうやめた──────────




















2年生になって、桜は変わった。

きっかけは、女王の転校だった。
クラスメイト
女王、転校しちゃったね~
クラスメイト
次の女王どうすんだろ。
クラスメイト
さぁね。
クラスメイト
あ、谷崎さんが良いんじゃない?
....え?
谷崎 桜
わ、私?
クラスメイト
うん。だって、女王の親友でしょ?
クラスメイト
だったら、谷崎さんで良いんじゃない?
クラスメイト
うんうん!さんせーい!
クラスメイト
俺も!
クラスメイト
私も!
谷崎 桜
えぇ....瞳はどう思う?
桜が私に話を持ちかける。
栗原 瞳
別に、良いんじゃないかな。よく分かんないけど。
少し、曖昧に答える。
谷崎 桜
そっかぁ、瞳がそう言うなら...
谷崎 桜
うん!やるよ!女王!
桜の一言で、クラスが盛り上がる。
クラスメイト
おお~!
クラスメイト
宜しく頼むぞ~!女王!



















こうして、女王 谷崎桜 が出来上がった。




















桜が変わり果てるのは、また別の話。

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