一緒に下校している時だった。
それは、思いもしなかった。
伏見さんが道端で急に止まり、女王を落とすことをやめようと言った。
....は?
伏見さんは黙る。
何も言い返せないのだろう。
伏見さんは、間を少し置いて話す。
伏見さんは少しためらいながら、私を見つめる。
女王、谷崎......桜。
そう。私たちのクラスの女王は谷崎桜。
私が復讐しようとしている、谷崎桜。
谷崎桜は、私の親友の谷崎桜を殺した。
谷崎桜は、私の親友の谷崎桜を捨てた。
新しい、谷崎桜になった。
私をおいて。
伏見さんが完全に黙る。
私は伏見さんを置いて、歩き出した。
私と伏見さんの間に、亀裂が入る。
大きな、大きな、亀裂。
くっついてたわけじゃないのに、亀裂が入った。
仲間ごっこは、もうやめた──────────
2年生になって、桜は変わった。
きっかけは、女王の転校だった。
....え?
桜が私に話を持ちかける。
少し、曖昧に答える。
桜の一言で、クラスが盛り上がる。
こうして、女王 谷崎桜 が出来上がった。
桜が変わり果てるのは、また別の話。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!