泣き止んだあとも、ミョンホはしばらく顔を上げられずにいた
ATLASの練習室は、もう片づけが終わり、照明も落とされている
残っているのは、静かな空気と、二人分の気配だけだった
あなたの下の名前がそう言って、床に腰を下ろす
ミョンホも少し遅れて、同じように座った
しばらく、沈黙
急かされない時間が、逆に胸を締めつける
小さな声
あなたの下の名前は、視線を向けるだけで、続きを促さない
言葉が途切れる
ミョンホは、ぎゅっと手を握った
喉が詰まる
あなたの下の名前は、何も言わない
ただ、ミョンホの言葉が止まるたびに、軽く頷くだけ
自分を責めるように、声が低くなる
そこで、ようやくあなたの下の名前が口を開いた
ミョンホは、こくりと頷く
震える声
ぽろ、とまた涙が落ちる
あなたの下の名前は、少しだけ距離を詰めた
肩が触れない、でも離れすぎない距離
名前を呼ぶ声は、静かで、優しい
ミョンホが、はっと顔を上げる
少しだけ、笑った
その一言で、ミョンホの肩から力が抜けた
ミョンホは、何度も頷いた
その言葉は、さっきより少しだけ強かった
あなたの下の名前は立ち上がり、ドアへ向かいながら振り返る
それだけ言って、去っていく
ミョンホは、一人残された練習室で、ゆっくりと息を吸った
怒られもしなかった
答えを押しつけられもしなかった
それなのに、不思議と前を向ける
床に落ちた涙の跡を見つめながら、ミョンホは小さく呟いた
その夜、
異国の練習室で、彼は初めて「ここにいていい」と思えた















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。