第2話

2.ギャルの特技がスプーン曲げはパワーワードすぎる。
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2025/02/09 12:00 更新
「や、な、ぎ、さ〜ん」

「な、何」

少し怖い笑顔で芦戸三奈という女の子が近寄ってくる。

「一緒に、マック行こ!!」

「ええ…」

初登校日の放課後。マックに誘われました。
なんだか質問攻めされそうな予感がして、断ろうと口を開く。その瞬間、後ろから誰かに羽交い締めされた。

「え、ちょ、なに」

振り返ると、制服だけが浮いている。たしか、透明になれる個性の、葉隠透。

「つっかまえたー!行こいこっ!」

「ええぇ……」






「それではっ。第1回A組女子会、開催っ!カンパーイ!」

「「カンパーイ!!」」

「あ、あぁ…」

あの後火子はA組の女子に連れられ、マックにやってきた。火子を逃がすまいとボックス席の奥側に座らせ、全員で囲んでいる。

「私たちまだ出会って三日だしさ、いっぱいお話しよっ!」

「ウチらでも一応色々自己紹介したけどさ、柳のことは皆わかんないし、気になってる。」

「ね、どこ出身?」

キラキラした瞳でみんなが一斉に火子を見つめる。
少し困った顔をしながら火子は答える。

「えっと、京都…」

「京都?いいなぁー!でもちょっと意外!あと訛ってないし!」

「家族があんま訛ってないから」

「へー!!!」

「じゃあじゃあ!誕生日!」

「12月31日」

「大晦日や〜」

「えっと好きな食べ物!おやつとご飯系両方!」

「肉じゃがと……五平餅…」

「五平餅?何それ」

芦戸が首を傾げる。

粳米うるちまいを粗めに潰して、味噌や醤油、ゴマなどで作ったタレをかけて焼いたものですわ。中部地方の郷土料理ですわね。」

「あ、八百万さん知ってるんだ。」

「愛知出身なんです。」

「ウチも知ってる。あんま食べたことないけど。」

「私もよ。ケロ」

「お二人はどちらからですか?」

「ウチは静岡」

「私は愛知よ」

「山間部で食べられることが多いから、その辺じゃあんまり知らんかもね。」

「へー、食べてみたいなー。でもなんで京都出身なのに食べたことあるの?」

葉隠がおそらくだが首を傾けている。

「小4、5くらいに引っ越した。岐阜の飛騨のおばあちゃん家に。」

「そーなんや!」

五平餅の話題がひと段落つくと、思い出したように芦戸が火子に話しかける。

「そうそう!聞くの忘れてた!個性何?」

「あっそうやん、なんなん?」

この個性社会、若い人ほど興味を持つ話題で、全員がわくわくした目で火子を見つめる。

「えっと、念力」

「「念力??」」

「こうやって、手で触れなくても物を動かせる。」

火子はそう言って手を伸ばし、自分の手前にあった紅茶の入った紙コップを浮かせる。

「おお〜」

「便利そう!」

麗日たちが楽しそうな反応をする。

「だから私の特技、スプーン曲げなんだよね。」

「す、スプーン曲げ…」

「確かに、小さい子の前でやったらよろこばれそうね、ケロ」

火子の個性、念力。
誰にも見えない、火子の心の手、とでもいうのだろうか、それで物を掴むことができる。あまり遠くのものは掴めない。この個性を使えば、スプーン曲げ程度お手のものである。

「あの、私の話ばっか聞いてつまらなくない?」

自分にしか質問が来ず、他の人とも話すよう促す。

「えー!そんな事ないよ!ねね、あと1個聞いていい?」

「ど、どうぞ」

芦戸の押しに負け、新たに質問を受け付ける。

「柳さん結構服着崩してるけど、ギャルってやつ?」

「え、あーまあ、そんな感じ」

「へー!岐阜のギャルかー!」

岐阜のギャル…?と火子は少し宇宙猫状態になる。
しかし、芦戸が1つ勘違いしているな、と思い、口を挟む。

「私、中学の後半岐阜じゃない」

「え、そなの!?」

「おばあちゃんと静岡に引っ越した。」

「なんでまた……」

「色々あったの」

「色々……」

説明する気のない答えに、芦戸はそれ以上踏み込むのはやめ、一旦注文した品に手をつける。それに合わせ、他の6人も食べ始める。

「そうだわ」

蛙水がふと思いたって、火子に話しかける。

「火子ちゃん、スプーン曲げ得意なんでしょう。今度見せてくれないかしら。」

「そうだ!見たい見たい!」

「えぇ」

突然の注文に、火子は戸惑う。困ったように眉を八の字にするが、蛙水たちの顔は期待の表情でいっぱいである。

「ええと、うーーん、」

少し唸ると、火子はゴソゴソと自身の鞄の中を漁る。
どこだ?あれ、っかしーな、とぶつぶつつぶやき、数十秒。

「あ、あった」

鞄から、コンビニにあるプラスチックのスプーンが取り出された。

「え、なんでもってんの」

「私のギャル友達が私のスプーン曲げ一発芸好きで…」

「みーせて!!」

「わかった」

ごほん、と少し咳払いしてから、火子は左手にスプーンを握り、右手をそこにかざす。
そして、少しだけ緊張したような高い声で話し出した。

「えー、皆様、こちらのスプーンにご注目。わたくし火子が見事曲げて見せましょう。」

火子そう語ると、彼女の手に少し力が入った。
そして、だんだんスプーンが曲がって行く。

「「おお〜!!」」

結構曲がった、その時、パキン、とスプーンが割れた。

「「ああ〜、」」

「プラスチックだから割れるよ」

「確かにそうですわね」

「でもすごいねー!」

「ノリノリでセリフ言ってたじゃ〜ん」

「これは友達が考えたやつね」

スプーン曲げは、思いのほか好評だった。

その後も雑談は続き、主に火子は聞き役に徹していた。
そして良い頃合いで解散する。

マックからの帰り道、高校生活初っ端からつまづいたと思ったが、意外にも順調だな、と考えながら歩く。
このままいけばクラスメイトとは良い関係を築けそうだ。

「あ、でも」







ギャルの特技がスプーン曲げはパワーワードすぎる。

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