第17話

無防備と悪魔
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2025/12/29 10:37 更新




 やばい。限界きてます。



藍
もう潔く諦め?
(なまえ)
あなた
...やだ。まだいける
小川
小川
いける人はそんな顔しないんですよ
(なまえ)
あなた
撫でるのやめて。…気持ち良くなっちゃう
小川
小川
え、これされるの好きなの?まんざらでもなかったってこと?
藍
いつも嫌そうな顔してたから嫌いなんかと思っとった
(なまえ)
あなた
嫌いだし…
小川
小川
こんな目とろんとさせといて嫌いはないでしょ
藍
ほんまに。そっかー、この状態のあなたさんやったら、素直モードになるんやなぁ
(なまえ)
あなた
...違うもん
藍
もっ、も...もん...って…まじかわ。なんなん限界突破したらキャラ崩壊するん?
小川
小川
これが本来の素ならとんでもない悪魔
(なまえ)
あなた
俺からしたら君たちのほうが悪魔だけどね
小川
小川
悪魔の囁きは聞いとくもんよ
藍
闇堕ちまっしぐらっすね
(なまえ)
あなた
手、智くん、手
小川
小川
手だけじゃわかんない
(なまえ)
あなた
ねぇ…それ、や...
小川
小川
いいじゃん。楽になりな?
(なまえ)
あなた
藍も。重い…
藍
あなたさん温いなぁ
(なまえ)
あなた
も...まじでや...めて...

小野寺
小野寺
駄目!なんか卑猥!!


 壁際の椅子に並び座る俺たちを指差し、太志さんが悲痛な声で叫んだ。







小野寺
小野寺
休憩が休憩にならない!
小川
小川
勝手に休んだらいいのに
藍
せやん。俺たちは俺たちで休憩してるんで


 先輩の言葉にも、我関せずといった様子の二人。

 どうぞお気になさらず、と太志さんを華麗にスルーし、二人はなおもそれを続ける。


 対して、ぞんざいな態度の後輩たちに、なんでこいつら開き直ってるの...と驚きの表情をする太志さん。



小野寺
小野寺
あなたさんも、なんか、なんか...妙にやら...とにかく駄目、よくない!


 今度はこちらに矛先が向くが、とんだとばっちり。

(なまえ)
あなた
俺何も悪くないんですが。ただやる事やってたら絡まれただけなんですけど


 休憩時間以外は各ポジションの練習の補助もあったりするので、隙間隙間で頃合いを見つけて練習の時に目についた選手たちの修正点を記録しておきたい。

 けれど過密な練習メニューの前ではそれもなかなか叶わず、大体において休憩時間か練習自体が終わってからとなってしまう。


 つまり俺は真面目に仕事をしていただけ。

 両サイドから頭を撫で回されたり腰に巻きつかれて体重かけられたり、ひたすら邪魔されていただけ。

小川
小川
”やる事”やってるように聞こえたんなら、常日頃そんなことを考えている太志さんが悪い
藍
太志さんのむっつりー
小野寺
小野寺
強調すんな。紛らわしい台詞ばっか言ってるお前らのせいだし


 ここ体育館なんだからね?いや、部屋でもやっちゃいけないけど!と反論する太志さんの声が、今の俺には遠く聞こえる。
 隣にいる二人のわちゃわちゃと話す言葉さえも。


 かなりきてるな...早く書いてしまわないと。

 これやって、足場の長机用意して、足りなさそうならドリンク補充もして...それから、あと、あとは...何をするんだっけ...。


 うつらうつらとする意識の中で、パソコンのキーボードをどうにか押しながら、記憶を探りスケジュールを辿る。

 けれど気持ちに反して、目蓋は下へ下へと落ちていく。



小川
小川
寝ていいのよ?
(なまえ)
あなた
仕事中だし、やる事あるし、それに...悪魔の前では...目なんて閉じられ...な、い...
藍
なんもせんって。たぶん
小川
小川
なんもしないから。おそらく
(なまえ)
あなた
断言、しろ...よ...


 笑ってる。悪魔が笑ってるよ。


 人の体を温いといいながら、腰に回した腕を寄せてもっと温い自分の体を擦りつける藍と、俺の髪を軽く、優しくとくように、撫でる手を止めない智くん。

 おかげで、撫でられ続ける頭の心地よさと、くっつく体から伝わる温かさに、繋ぐ言葉もあやふやになる。


 悪魔であり、睡魔でもあるのか。こいつら。


 いけない。余計なことを考えていたからか、集中の糸が完全に切れた。

 落ちるな、落ちるな。
 落ちればそのまま、悪魔の手に落ちることになるぞ。

藍
やってこんな姿見たら、なぁ
小川
小川
男の子だもの
小野寺
小野寺
だもの、でもいけません
藍
俺らがおかしいんやない
小川
小川
勝手に手が出てしまったとしてもそれは、無防備過ぎるあなたさんから発する引力のせい
小野寺
小野寺
抗えよ
(なまえ)
あなた
たい...さ...太志...さ...ん...
小野寺
小野寺
どした?こいつらどつく?
(なまえ)
あなた
…手…
小野寺
小野寺
手?
(なまえ)
あなた
…手、貸し…て
小野寺
小野寺
俺の手?
(なまえ)
あなた
叩いて...頬...そし...たら...目、覚め...る...
小野寺
小野寺
まっ、え…あなたさん?あなたさーん?
小川
小川
落ちた
藍
やるんすか?太志さん、この可愛いお顔をしばくんすか?
小野寺
小野寺
しないしない!俺無理よ?あなたさんの顔叩くなんて
小川
小川
万が一やったら、俺が太志さんの頬にカウンターくらわすんで
小野寺
小野寺
あなたさん起きて。俺の手握ったまま眠らないでー
小川
小川
ちょっと役得、とか思ってるくせに
藍
手ぎゅってされて心の中では喜んでるくせに
小野寺
小野寺
小川
小川
太志さん、右と左どっちにします?
藍
この際両頬でもいいっすよね
小野寺
小野寺
俺の顔面が腫れ上がる前にあなたさん頼むから目を覚まして!



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