やばい。限界きてます。
壁際の椅子に並び座る俺たちを指差し、太志さんが悲痛な声で叫んだ。
先輩の言葉にも、我関せずといった様子の二人。
どうぞお気になさらず、と太志さんを華麗にスルーし、二人はなおもそれを続ける。
対して、ぞんざいな態度の後輩たちに、なんでこいつら開き直ってるの...と驚きの表情をする太志さん。
今度はこちらに矛先が向くが、とんだとばっちり。
休憩時間以外は各ポジションの練習の補助もあったりするので、隙間隙間で頃合いを見つけて練習の時に目についた選手たちの修正点を記録しておきたい。
けれど過密な練習メニューの前ではそれもなかなか叶わず、大体において休憩時間か練習自体が終わってからとなってしまう。
つまり俺は真面目に仕事をしていただけ。
両サイドから頭を撫で回されたり腰に巻きつかれて体重かけられたり、ひたすら邪魔されていただけ。
ここ体育館なんだからね?いや、部屋でもやっちゃいけないけど!と反論する太志さんの声が、今の俺には遠く聞こえる。
隣にいる二人のわちゃわちゃと話す言葉さえも。
かなりきてるな...早く書いてしまわないと。
これやって、足場の長机用意して、足りなさそうならドリンク補充もして...それから、あと、あとは...何をするんだっけ...。
うつらうつらとする意識の中で、パソコンのキーボードをどうにか押しながら、記憶を探りスケジュールを辿る。
けれど気持ちに反して、目蓋は下へ下へと落ちていく。
笑ってる。悪魔が笑ってるよ。
人の体を温いといいながら、腰に回した腕を寄せてもっと温い自分の体を擦りつける藍と、俺の髪を軽く、優しくとくように、撫でる手を止めない智くん。
おかげで、撫でられ続ける頭の心地よさと、くっつく体から伝わる温かさに、繋ぐ言葉もあやふやになる。
悪魔であり、睡魔でもあるのか。こいつら。
いけない。余計なことを考えていたからか、集中の糸が完全に切れた。
落ちるな、落ちるな。
落ちればそのまま、悪魔の手に落ちることになるぞ。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!