第76話

〔大西風雅〕先輩
9,597
2020/08/31 14:28


ガラガラッ



「しつれーしますっ。」



『…っ風雅くん!また来てくれたんだ!』



「まぁーね。ここ全然人来おへんから、居心地ええし?それに、俺が構ってあげないとあなたちゃんも、つまらんかなって。笑」



『余計なお世話や!笑 そーゆー風雅くんは、今日も部活サボりですか?笑』



「サボってませんー!今日は部活休みだから、いいんですー。」



『えー、本当?笑』



「ほんとやし。なんで嘘つかなあかんねん。笑」



『だって風雅くん、いつも部活サボってここ来るから。笑』



「いつもじゃないし…!たまにやし。」



『たまにサボってる事は認めるんだ。笑』



「んな事言ったらあなたちゃんやって。ここに居るだけで、何もしてへんくせに。笑」



『なっ!私はサボってる訳じゃないんもんっ!人が来おへんだけやもんっ!』




放課後の図書室。



この時間にここに居るのは



いつも俺と、図書委員であるあなたちゃんの、2人だけ。




『っていうか、そもそも私先輩だからね!? ちょっとくらい敬ってくれてもええんやない?笑』



「えー、だってあなたちゃん、ドジやしアホやし? 全然先輩っぽくないやんか。笑 」



『ちょっと風雅くん!それどーゆー意味よ!笑』



「そのままやけど~?笑」



そう言いながら、俺より遥かに背の低いあなたちゃんの頭を



小さい子にするみたいに、俺がぽんぽんってすると




『もぉっ、私の方が年上やのにっ!』




なんて、ぷくっと頬を膨らませながら



少し不貞腐れたように、そう言うあなたちゃん。



あなたちゃんは、学年でいえば俺より1つ年上で。



だけど、中身は俺より断然子供っぽくて。




「やっぱり、あなたちゃんの方が俺より年下みたい。笑」



『そんなことないもんっ!私の方が風雅くんより大人なんですー!』




こうやって、少し俺がからかっただけでも、すぐに拗ねる所とか



ちょっと抜けてる所とか。



そんなあなたちゃんのとても完璧とは程遠い、ちょっとダメな部分も全部含めて



俺は、あなたちゃんのことが好き。



だから、俺がここに来るのだってあなたちゃんに会うためだし。



自分では、不器用なりにも、結構わかりやすく"好き"って気持ちを、表に出してるつもりなんやけど…




『そもそも風雅くんは…!』




なんて、永遠と私の方が先輩なんやから~って



必死に説明し続けるあなたちゃんは



鈍感なのか、何なのか。



一向に、俺の気持ちに気づく気配はない。



それでも最初は、あなたちゃんと付き合うことが出来なくたって



今はまだ、少しでもあなたちゃんの近くに居られれば充分だって



そう思っていたけれど。



流石にちょっと鈍感すぎひん?



ここまで気づいてもらえへんと、流石にそろそろ俺やって。



我慢の限界って言うもんがあるんやけど。




「ねぇ、あなたちゃん。」



『んー?…っ!?』




少し手を伸ばせば、簡単に届く距離。



そっと、あなたちゃんの白くて綺麗な頬に触れれば



さっきまでの表情とは打って変わって。



少し顔を赤くしながら、驚いたような、照れているような。



そんな表情を見せるあなたちゃん。




『風雅くん…?』




下から覗き込むように、戸惑いながらも俺の様子を伺うあなたちゃんは



すっごくすっごく可愛くて。



今すぐにでも、抱きしめて、俺だけのものにしたいってそう思うけれど。



俺の性格上、自分の口から直接、あなたちゃんに"好き"って気持ちを伝えるのは



何だか気恥ずかしくて、出来なくて。




「ねぇ、あなたちゃん。あなたちゃんは俺のこと、どう思ってる?」



『えっ…?』



「あなたちゃんは俺の事、好き…?」




なんて、ちょっと遠回りな言い方をしてみたり。



2人の間を流れる、沈黙の時間。



心臓がドキドキ言ってるせいなのか



何故だかいつもより、時間の流れが遅いような感じがして。



段々と、この雰囲気に耐えられなくなってきて



「…あのっ、やっぱり何でもないからっ、。」




そう言って、逃げるようにここから離れようとすれば



「…っ、!?」



ぎゅっと、あなたちゃんは制服の袖を掴んできて。




『好き…。風雅くんのことが、好きっ!』



なんて、顔を真っ赤にしながら



そう言ってくる、あなたちゃん。




「俺も、あなたちゃんのこと…好き。 あなたちゃん、俺と付き合ってくれますか?」



『うんっ…!』




そう言って、こくっと頷くあなたちゃんを



俺はぐいーっと引き寄せて、抱きしめて。




「絶対、幸せにする。」



『ふふ、うんっ。』




年上なのに少し抜けてて、子供っぽくて。



そんな、可愛い"先輩"は



今日から俺の、大事な"彼女"。







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