ボクはモミジ公園にもうついていた。
時間で言うと、30分前…早すぎたかもしれない。
こんな遅い時間でも、公園は桜のライトアップのおかげなのか、人で賑わっていた。
前、バトルをしていた時の服装。
とても懐かしく感じた。
それに…自分の心のどこかに「かわいい」という思いがあった。
モミジ公園の桜のライトアップは実に綺麗だった。
モミジ公園の桜は、様々な種類がある。
ニンゲンがいた時代にあった、シダレザクラ、ソメイヨシノ、サトザクラ…
そしてこの時代になって品種改良された、ミライザクラ、ハコブネザクラ…
どれもこれも美しかった。
でも、ボクの恋人の方が、よほど綺麗に見える。
その時、とある看板に目が止まる。
その看板には、『ハコブネザクラを川に流してみよう!どちらが早く岸に着くか勝負しよう!必要なものはハコブネザクラの花びらだけ!』と書いてあった。
ちょうど、ボクはさっき拾ったハコブネザクラの花びらを2枚持っていた。
ボクはさっきの看板を指さす。
満面の笑顔でサンサンくんは答えた。
川の岸に着いた。
二人同時に手を離す。
ハコブネザクラは向こう岸に向かって流れていく。
空には満月。
言うタイミングは…今か。
花びらを追いかけようとしたサンサンくんがふりかえる。
ボクは、サンサンくんの近くまで行った。
そして、こう言った。
「月が綺麗ですね」とは、告白の言葉のひとつだ。
さて、オーケーしてくれるかどうか…
この言葉は…
「私はずっと前からあなたのことが好きでしたよ」という意味だ。
つまり…オーケーしてくれたということだ。
ボクとサンサンくんの顔が近づく…
ハコブネザクラは、同時に向こう岸へゴールした。
空は、この夜結ばれた二人を祝福するかのように晴れていた。
その日は、ボクにとってわすれられない1日となった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。