伊ヶ崎は元々私の隣のベットに入院していて、なんとなく声をかけられ仲良くなった
なんの理由で入院していたかは、本人が教えてくれないからよくわからない
ちなみに私は去年の夏交通事故にあい、ここの病院に入院した
本当はそろそろ退院してもいいのだが、足のリハビリが少し長引いて一年も入院してしまった
伊ヶ崎は先に退院して、その後よく今みたいに見舞いにきてくれるようになった
「 はぁ、はぁ‥‥‥なんで見舞いに来ただけなのにこんな疲れんだよ、 」
『 それはこっちのセリフよ! 』
散々言い合って、息が上がってきた頃にやっと小さな喧嘩が終わった
「 はぁ、、じゃぁ俺もう行くな。 」
『 え、ええ。ありがとうね。 』
そう感謝の言葉を言うと、伊ヶ崎はぎょっとした目で私のことを見てきた
「 おいおい気は確かか?
明日は槍がふるぞ‥‥ 」
『 ちょっと失礼ね!!!!!!!
はやくでてって!!!! 』
「 うおー怖え怖え 」
そう言って伊ヶ崎は病室を出ていく。
『 ‥‥‥‥‥‥ 』
一気に静かになった病室でさっきの出来事を思い出す
今日もうまく感謝の気持ちを伝えられなかった
元々私は四人部屋に居たのだが、途中から個人部屋に移ったのだ。
独りぼっちになり寂しかったときに、伊ヶ崎は毎日のように見舞いに来てくれた
それがほんとに嬉しいのだ。
なのに、
なのに今日も “ありがとう” と “嬉しい” を言えなかった
『 もーーーーー頑張ってくれよ私‥‥ 』
そう言ってベットに崩れ込む。
空はもうオレンジ色に染まっていて、カラスも鳴いている
『( 明日も伊ヶ崎来てくれるかな )』
柄にもなくそんなことを思った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。